ながちゃんが我家にやってきた（2）

その時の私は、お嬢さんへの思いを、Ｋに突然告白された先生のようでした（漱石先生すいません）。
思いつめたような、照れたような不思議な表情を浮かべている娘の顔を見ながら、
私は少し黙っていました。それから私が口にした言葉は短いものでした。
「ダメに決まってるじゃないか」
娘の表情はさっと固いものになりました。
私はすぐにこう付け加えました。
「飼っちゃいけないって、決まってるんだから」
私は外に言うべき言葉を知らなかったのです。
つまらない小市民的論理と分かっています。
でもそれを常々大事にしているのが、私という人間でした。
それが悲しい現実だったのです。

娘は、それから何日か私と口を利かなくなりました。
おそらく世間体しか頭にない人間と、私を軽蔑したのでしょう。
でもそれだけで終わっていたら、苦い思いが残るにしろ、まだ良かったのです。

本当に予想もできないことが起こったのは、しばらく経ってからでした。