189件のひとこと日記があります。
2012/10/29 02:27
噛み癖のある馬と言うと古い話を思い出す。
噛み癖のある馬と言うと古い話を思い出す。これは山口瞳の名著「草競馬流浪記」に書かれている話だ。いきなり催促されて記憶にたよって書くので間違いがあったら訂正して頂きたい。
たしかカブトシローだったと思う。
カブトシローをリアルタイムで知っている人は、相当年季のはいった競馬ファンね。
癖馬カブトシロー、気性が荒く人に従わない、やたら噛む。人気になると凡走、人気がなくなると大激走を繰り返し、ファンは新聞の読める馬と呼んだという。
人気薄で天皇賞を大激走、続く有馬記念も連勝、もう立派な名馬ね。でも売られました。
当時の有馬記念の賞金に近い額だったとか。この時の話はいろいろ残っていますがどこまで本当か分かりません。とにかく、山口瞳はカブトシローを尋ねてはるばる行くわけです。
ここからは凄いです、目をむきます。気の弱い人は口から泡を吹くかもしれない。涙は決して見せないでね。
厩務員らしき人に案内されてカブトシローに再会した山口瞳、「大丈夫ですよ、大人しいもんです」と言われても、近付けない。もちろん触れない。そりゃあそうです、なにしろ稀代の癖馬カブトシローですから。がぶっとやられたらバンドエイドじゃすみません。
でもにこにこと撫でているその人を見ているうち、ついうっかり鼻先に手を出しました。
そのとたんです、いきなりです。ペロペロペロ・・・。
「ね、大人しいでしょ、可愛いでしょ」と言われて山口瞳は泣いたかもしれない(記憶だけだかんね)。ああ、みんな嘘だったんだね。お前は本当はいい奴だったんだね。馬の首にすがって泣く山口瞳。
だがシャツの襟元から覗くものを見た時、山口瞳は語られない事実を悟ったのでした。大胸筋を大きくえぐられた傷跡。周りの皮膚と色が違って生々しい。
「来てしばらくは気難しかったけど、なれるまでね」という言葉が意味するものがこの傷跡でした。耐えて耐えて、どこまでも馬の身になって耐えて、辛抱強く優しく接してくれる人に、やっとカブトシローは巡り会ったのでした。
良かったねカブトシロー、胸の内でつぶやきながら今度こそ山口瞳は泣いたでしょう。
本来の優しさ、穏やかさを取り戻し、人に心を開いたカブトシローの前で。
山口瞳先生、失礼をお許しなされて下さりませ。
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文之進さん
youjunさんありがとうございます。
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youjunさん
こんばんは、言葉ではなく、心で通じるものが、真心ですね。
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youjunさんがいいね!と言っています。
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文之進さん
追伸です。
カブトシローのレースを詳細に調べた人がいて、好走する時は、実は一定の条件があったということです。ムラ馬ではなく、いつも懸命に走っていたんですね。これもたしか山口瞳が書いていたと思います。
泣かせるぜカブトシロー、おまえはどこまでいい奴だったんだ。 -
文之進さん
けんぷーさん、おはなさん、情熱の薔薇さん、ゆーじろーさん、みなさんありがとうございます。
山口瞳、いいですよね。競馬界にとっても競馬ファンにとっても、惜しみても余りある人でした。
でもね、私の嘘が(いえ想像が)いっぱい入ってますから。記憶だけで書いたんだもんね。
皆様のお近くの競馬場も必ず出てきますよ。ああ私は新潮社とは全く無縁です。念のため。 -
ゆーじろー。。さん
凄く良いお話しで感動しました。
相手が馬でもやっぱり大事なのは信頼関係なんだな〜って改めて思わされましたね。 -
ゆーじろー。。さんがいいね!と言っています。
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情熱の薔薇さん
えぇ話やな〜。
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情熱の薔薇さんがいいね!と言っています。
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おはなさんさん
泣かせるお話、、、でもハッピーエンドだからよかった(ホッ!*)噛み猫ふぅは挨拶代わりに私の鼻をガブッ! なおる事なく神猫に*あっ、すみません。。。。。。。。。。。
{草競馬流浪記}図書館で探します。