天皇賞・春、レース回顧

ゴールドアクターはレース前からテンションが高かった。Ｇ１で１番人気に推され、大きなプレッシャーが掛かっていたのだろう。馬にそんなことわかるはずがないという人もいるが、私は馬でも勘でそれを感じると思う。ゴールドアクターには、金を賭けた人間たちの想念が塊となってのしかかってきたのだろう。いつもとは違う雰囲気に恐れおののいたに違いない。

吉田隼人騎手にもかなりのプレッシャーが掛かったと思う。彼は前半脚を溜めるために、馬を中団の前に付けたかったのだろう。しかし、馬はもっと前に行こうとした。騎手は手綱を引いてそれを抑えた。しかし、いつもならその指示に素直に従うゴールドアクターだが、今回はその指示に逆らって前に行こうとした。そんな綱引きがしばらく続いて、人馬ともに無駄な体力を使ってしまった。

さらにゴールドアクターはこれも騎手の指示に逆らって他の馬の後ろに入ることも嫌がり、終始外々を回る距離損をしてしまった。そして騎手は残り８００ｍぐらいから仕掛け、４コーナーで先頭に並びかける正攻法の戦法で馬を導いた。しかし、道中のスタミナロスと距離損ですでに体力は消耗していたので、最後の直線に向いたときにはすでに脚は無く、後続に差され、１２着に大敗してしまった。

騎手の騎乗についてうかつなことを書くと記事が削除されるので、言葉を選んで慎重に書く。吉田騎手の騎乗については、可もなく不可もなしと言ったところだ。Ｇ１の１番人気の馬の騎手としてやるべきことはやったということだ。掛かる馬の手綱を引いて暴走するのを抑えたし、４コーナーで先頭に並びかけるように仕掛けた。彼に望むことはこれで十分だろう。

強いて苦言を言えば、人馬がかみ合っていなかった。つまり人馬一体ではなかったと思います。彼は距離を考えて、中団に控えて前半は極力スタミナを温存したかったのでしょう。逆に馬は興奮して前へ行きたがった。こんな時はどうすればいいのだろう。無理にでも抑えるのか、それとも馬の気に合わせて行かせるのか。また、抑えるにしてもどう手綱を引けばいいのか。この前テレビで見たのだが、一流外国人騎手の二の腕に特別盛り上がった筋肉があった。それは手綱を強く引くために発達した筋肉だそうだ。中途半端に手綱を引くのではなく、馬が従わなければいけないような圧倒的な力で引いて、短い時間で馬を抑えるためだと言う。

また、馬を行かせるにも、暴走させて、最後の直線で歩かせて、最下位でゴールインさせてしまっては、それこそ目も当てられない。馬を行かせても暴走させない、なるべく持たせるような行かせ方があるのではないか。ムーア騎手やウイリアムズ騎手はよく馬を先行させるが、決して暴走させることなく、ゴールまで持たせることが多い。日本人で言えば仲舘騎手もそんなタイプだ。先行させても馬を持たせるコツのようなものがあるのだろうか。

話が横道にそれましたが、吉田隼人騎手の騎乗については、可もなく不可もなく、やるべきことはやったという感じです。初めから彼にはそれ以上を望んでいなかったので、想定内の内容でした。また、他の一流騎手が乗ったら勝たせることができたのかと聞かれたら、それは難しかったのではないかということです。良くて５着以内はあったかもしれませんが、勝たせるのはかなり難しかったと思います。もし５着以内に持って来たらそれはうまい騎乗でしょう。つまり、うまい騎乗をしても、今日の馬の状態では勝たせることは難しかったと思います。