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2017/12/18 23:46
競馬中級講座:折り合いと位置取り(その1)
1.折り合い
レースの前半で騎手が手綱を引いて馬を抑えている光景をよく見ます。馬は放っておくと前半に突っ走って、後半でスタミナを切らしてしまいます。これでは良い着順は望めません。馬がレースの前半に全力で走ってしまうことを「掛かる」と言います。騎手は掛かった馬を手綱を引くことで抑えます。スタート直後はいい位置を取るためにある程度全力で走らなければいけませんが、位置取りが決まった後は、力を抜いて一息入れなければなりません。騎手は馬にそれをさせるために手綱を使って馬を管理します。
しかし、馬は動物なので、人間の言うことを理解できるとは限りません。位置を取らなければいけないからもっと速く走れと命令されて速く走ったら、今度はスタミナ温存のためにゆっくり走れと命令された。人間なら理解できますが、馬には理解できない場合があります。いったい速く走ればいいのかゆっくり走ればいいのか。混乱する馬もいるでしょう。
馬の管理がうまく行くことを「折り合った」と言います。つまり、騎手の意志と馬の意志がうまくかみ合ったということです。逆に騎手の意志と馬の意志がかみ合わないことを「折り合いを欠く」と言います。折り合いをうまくつけることができる騎手が良い騎手であると言えます。
2.位置取り
競馬のレースは、日本では新潟の直線1000m以外は周回コースで行われます。カーブではインコースを走らないと距離損をします。したがって馬群は縦長になります。その隊列の前の方を走る方が有利です。しかし、先頭を走るのは後ろからプレッシャーを受けることと後続馬の目標になるので避けたいのです。例えば18頭立てのレースだったら、前から4〜6番手辺りを走りたいのです。これを「好位(好位置)」と言います。そしてできればインコースが取りたい。騎手たちはこの好位を狙ってしのぎを削るのです。これを「位置取り」と言います。(中団や後方の位置取りが良い場合、アウトコースが良い場合がありますが、それは後ほど話したいと思います。)
3.折り合いと位置取りのバランス
馬券を勝った馬が、スタートしてから騎手が下げて、後方に位置取ったとき、「何でそんなに下げるんだよ。届かないだろう。」と思ったことはありませんか。そして、実際、4角で大外を回して、最後の直線で外からよく追い込んだけど4着までだった。「そら見たことか。お前があんなに下げるのが悪いんだ。」と愚痴を言ったことはありませんか。
こんなときはたいてい折り合いを欠いているのです。スタートして、馬が猛然と前に行こうとする。騎手は前半はリラックスして走らせたい。しかし、馬が言うことを聞かない。騎手が必死に手綱を引っ張る。そんな騎手と馬の戦いが繰り広げられている場合があります。
また、騎手が後半のスタミナ切れを過剰に心配して手綱を抑え過ぎることもあります。また、馬を前に行かせると掛かる場合があり、それが心配で前に行かせられないという場合もあります。自分の騎乗技術に自信がないという騎手はとにかくよく抑えます。
4.理想のレース
騎手から見た理想のレースは、前半はリラックスして、残り600m辺りから徐々に加速して、残り200mで抜け出すという展開です。ただ、あまりこの理想にこだわると、位置取りを悪くする恐れがあります。前半、「リラックス、リラックス」と馬をなだめながら走らせていたら、最後方になってしまった。残り600mでそれに気づいて、仕方ないから4角で大外を回して、少し早いけど残り400mでスパートしたら、残り200mで脚が無くなっちゃった。こんな光景をよく見ます。
かと言って、いい位置を狙って馬を出して行ったら、馬が掛かって暴走して、最後の直線でグダグダになって、歩くようにゴールインしてしまった。もちろん最下位で。さすがにこんな光景はあまり見ません。それはJRA競馬学校で、この乗り方は最悪であると教えられるからです。JRA競馬学校出身騎手は、最後のスタミナ切れをとても嫌がります。したがって、位置取りが悪くなっても、前半は抑えるという習慣が身についています。


