32件のひとこと日記があります。
2014/10/15 15:36
相馬眼について
昔、某雑誌に「名前の出せない生産者」として、牧場の匿名の生産者がデビュー前の馬の写真から、「走る、走らない」を審査し、同時に馬体の見方もレクチャーしていた企画があった。
数年行われたが、牧場関係者からのクレームであろうか、自然消滅した。
私は、その人の馬体コメントと写真を見比べて、何千頭もの馬の相馬眼を研究したものだった。
「名前の出せない生産者」のヒット馬は、ランニングゲイルだった。種牡馬としては期待されなかったランニングフリーの仔で、G1は取れなかったが、弥生賞を取ったので相馬眼は成功といって良いだろう。武豊も調教の段階で「走る」と明言していた。
だが、「名前の出せない生産者」は、失礼ながらハズレもあった。馬は成長するに従って形が変わる。実際は、当歳馬から一歳馬と、その成長ごとに馬体を見ないと分からない、と言っていた。
「名前の出せない生産者」が相馬眼では、マイネルの岡田総帥には敵わないと言っていた。生産者から見ても総帥は凄いと。
だから、私は思った。結局、相馬眼は一つのファクターに過ぎないと。血統、ニックス、兄弟が走っているか、等々もファクターに過ぎない。
ランニングゲイルにしても、母馬の父は、ミルリーフである。例えば、その仔のミルジョージも良い種牡馬だったが、それよりもミルリーフ直仔の方が価値は高い。云わば、母父がノーザンダンサー系種牡馬よりも、ノーザンダンサー直仔の繁殖牝馬の方が価値がある。
私はシルクの会員だが、シルクプリマドンナがそうであった。ただし、プリマドンナの場合、トモのボリュームも凄かったし、頸が水平に出ていて、馬体のバランス面でも優れていた。それに、オーラがあった。エネルギーがみなぎっているというような。
その後、優駿のタップダンスシチーが活躍したが、この馬も母は直ノーザンダンサーである。募集時の写真を見た時、とてもじゃないが「買えない馬体」だと思った。いくら直ノーザンダンサーでも、そうそう走らないだろうとタカをくくっていたが走ってしまった(笑) 更に、タイキシャトルの募集時写真も見たが、馬体は幼く見えて、とても仕上がるようには見えなかった。タイキシャトルは、母父カーリアンで、直ノーザンダンサーではないが、当時、母父カーリアンはG1級の仔が出るといって大人気であった。
つまり、相馬眼でも血統には敵わない所があり、だからといって血統だけでも大物かどうかは分からないのである。全兄弟がいい例である。
私も「名前の出せない生産者」のおかげで、ある程度は相馬眼を持てるようになった。以前、シルクで育成調教時に凄いとされていた馬の写真を見て、き甲が立ち過ぎているから、これはいくらなんでも故障のリスクが高すぎるとして、買わなかったが、案の定故障してデビューすら出来なかった。
だが、これも確率の問題で、当たりハズレは絶対にあるものである。
牧場でさえも「今年の一番馬」とされている馬が、走らなかったりする事は、多いのである。よく耳にするのが、G1馬の取材で「生まれた時から期待していましたから」などと聞くが、どの牧場でも、期待馬は必ずいるものである。