14件のひとこと日記があります。
2012/06/25 13:56
宝塚記念 感想
『何をバタバタしてんの?』
と、まわりで慌てている人間たちを尻目に、ただ走ってきただけで勝ってしまったような印象だった。
この日のオルフェーヴルに正直言っていい印象はなかった。レースをしなかった天皇賞→休養→追い切り不足と来ればプラス体重で出てくるはずと思っていたが、マイナス体重だった。心なしか腰のあたりの筋肉も寂しく見えた。本当に7割の状態なのかもな、と感じた。パドックも大人しい。早く走らせろという感じのオルフェーヴルではなかった。
少し嫌がったゲート入りにももちろんいい印象はなかった。どんな位置取りでレースをするかなと見ていたが出たなりの位置。喧嘩はしてないように見えた。ウインバリアシオン、ショウナンマイティはもちろん後方にいる。出遅れ気味だったルーラーシップはやや先行気味のウィリアムズポジションにいる。ルーラーシップはこの時点で消えたなと思った。ルーラーシップは先行して頑張れるタイプの馬ではないからだ。ましてや、そこそこのペースで流れている。これは後ろの馬だなと。
オルフェーヴル、位置取りはいい。ごちゃごちゃしている所に突っ込んでいるが、オルフェーヴルはあれでいいんだと、ボクの知人の競馬評論家は菊花賞の時にボクに説いてくれた。
勝負所の3コーナーを過ぎて内からするすると上がっていく馬が見えた。岩田だった。ここはウインバリアシオンではなく、岩田と表現したい。ルーラーシップ同様に騎手のスタイルに馬が合わせられる形になっている。やはり大外一気は狙わないんだな、もったいないと思った。内回りでもこの馬はギリギリまで我慢して外を狙うべき馬だと思う。それはショウナンマイティも同じだが。オルフェーヴルはまだ動かなかった。悪夢が甦った。ダメかとも思った。覇気がないようにも見えた。
そして、直線。
オルフェーヴルの前が空いた。
ルーラーシップが外にいる。一番いい所を走っている。
まるでツンと澄ましたお嬢様のように澄ました顔で内から一気に突き放す。
『ほら、走ればいいんでしょ』と言われてるようだった。やっぱり強いんだ、そう思ったらまだゴールをしていないのに涙が出てきた。あの、負ける気がしないというオルフェーヴルになっていた。いくら外差し馬場でも外から差せる馬はいるはずがないと思った。そのまま涼しい顔でゴールした。不思議と強いと思わなかった。あのオルフェーヴルが戻ったのなら当然と感じたからかもしれない。それよりも感動が上回ったからかもしれない。オルフェーヴルのことばかりを考えていた2週間だった。不安ばかりだった。そんな不安が嘘のような勝ちっぷりに涙と同時に笑いすら込み上げてくるほどだった。池添がオルフェーヴルの馬上で雄叫びをあげている。うれしいだろう。池添が一番叩かれた。ネットでは心ない書き込みが後を立たなかった。ボクも天皇賞の乗り方は気に入らなかったが、まるで人間を否定するような書き込みが飛び交っていた。しばらく勝てない時期も続いていた。おそらく泣いていたに違いない。嬉しくて嬉しくて堪らないだろう。みんなは関係者の努力の結晶だというだろう。状態が悪くても『いつも通り』の調教を貫いたことがよかったのだろう。でもボクは今回の池江発言はやはり気に入らなかった。不信感を抱いたのも事実で、オルフェーヴルが勝ったからと言って手のひらを返して褒め称えることは出来ない。
慌てていたのは人間だけでオルフェーヴルはいつも通り走っただけなのかもしれない。スラムダンクで『負けるということは財産だ』という名言があるが、前走の敗戦で何かを感じ取ってくれたのかもしれない。どちらにせよ、強いオルフェーヴルがまた見れたことが何よりも嬉しい。ディープインパクトがジャパンカップを勝ったときも似たような気持ちだったことを思い出した。少し頼もしいオルフェーヴルになってくれて夢はもちろん海外へ。
なんて素敵な週末だったことだろうか、オルフェーヴルには心底感謝したい。