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2021/08/10 13:01
〇〇話 第3話 お盆前ですから…(^^ゞ
今はコロナの影響で中止されていますが、ウチの会社には職員慰安旅行が有ります。
実施時期は、悲しいかな旅行代金の安い7月初旬の日〜月曜日の1泊2日です。
その年の目的地は、千葉県某所でした。
地名を出すと完全にバレるので、海沿いのホテルと言うことにしてください。(笑)
割り当てられた僕等4人の部屋は、海に面した上層階の眺めの良い部屋でした。
観光して、ホテル到着後、風呂へ入り、宴会、その後カラオケ、居酒屋、部屋へ戻るのは
午前様が定番コースです。
そこでまた冷蔵庫のビールで盛り上がる中、部屋の電話がけたたましく鳴りました。
「こんな時間に誰だよ?」
「女性陣から酒宴のお誘いじゃない。」
そんな声を聞きながら最年少の僕が受話器を取ると、女性陣からの内線電話です。
「早く来て!」 (キャーッ!)
「怖い! 怖い!」 (うぇ〜ん、え〜ん)
「ヤダ、誰か居る!」 (ヒーッ! ヒーッ!)
電話の向こうでは女性達が阿鼻叫喚、尋常でないパニック状態なのが解りました。
「女子が助けを呼んでますけど… 行ってみます?」と先輩達に伝えます。
「なんでだよ?」
「何か問題が有れば、フロントに電話すればいいのに…」
文句を言いながらも全員腰をあげます。
女性陣の部屋は一つ下の階ですから、僕らの部屋からは数十秒で到着します。
「こんばんは〜。」と呑気に僕等がドアを開けて部屋に入ると…
抱き合って泣いている女子、茫然と座り込んでいる女子、俯いて号泣している女子…
それは後にも先にも見たことのない修羅場でした。
「大丈夫?」
「どうしたの?」
「何が有ったの?」
やっと返って来た言葉は、「さっき、部屋の壁を凄い勢いで叩かれた。」でした。
最初は自分たちの会話が煩いのかと思って静かにしたのだけど、一向に叩く音が止まず、
その尋常ではない気配に怖くなって電話したということでした。
「そうなんだ。 お隣さんがねぇ…」 僕は廊下に出て隣の部屋を確認します。
実は女子の部屋、フロアの一番奥の部屋で隣の部屋は有りません。
そこで僕は非常ドアを開けて外部を確認しますが、当然、何処にも人影は見えません。
しかも夜に降り出した雨が結構な勢いになっています。
そもそもホテル仕様のドアですから、一度外部に出ると再入館は不可能です。
また、外部から外壁を叩いて、部屋の中まで響くようなホテルって?・?・?
一応、このホテルはテレビCMも流している、その地区随一のホテルです。
部屋に戻って、僕は正直(?)に「この部屋、隣は無いよ。」と告げます。
すると、更に高いトーンで一斉に女子が泣き出しました。
「この部屋で寝ない方が良いかもね…」とW先輩が言うか言わないかの瞬間……
雨の中、窓の外を縦長の白い物体が右から左へスーッと平行移動して行きます。
僕にはその物体には縦縞模様が入っているように見えました。
それがベレンダに居れば姿形がハッキリ解かるのですが、輪郭がモヤッとしているので
ベランダより外、つまり空中を移動していると想像できました。
時間にして3〜4秒間の出来事でした。
それを目撃したのは、僕を含めてベランダ側を見ていた数人だったと思います。
俯いて泣いていた女子には不幸中の幸いでした。
一瞬の間をおいてW先輩が大きな声で「窓の外、早く確認して!」と言います。
僕は「OK!」と窓を開けて外を確認しましたが、それらしきモノは既に見当たりません。
僕は「多分、上の部屋で干していたタオルが風で流されて来たんだよ。」と繕いました。
そのまま部屋を使わせる訳にも行かず、真夜中の大移動。
僕らの部屋と交換して一件落着となりました。
今にして思えば、僕らが目撃する中で空中を横切った縦長の白い物体、
それが浴衣を着た人間だとすれば、ドンピシャリの大きさ、姿形でした。
でも、勿論、それは人間では無いでしょうが…。