〇〇話シーズン２　最終話 w(゜o゜)w

最終回は、前回の〇〇話に登場したＷ先輩にまつわる話をしましょう。



Ｗ先輩は僕の１つ年上で…


石黒賢似の二枚目で…


話上手で面白くて…


お酒も強くて…


有言実行で…



『超』の付くポジティブ人間で、僕の人生観を変えた人でもあります。



更にロックバンドのボーカルで、当然、女性ファンも多く、超絶モテます。



好みの女子には、「今度、飲みに行こう。」が口説きの決まり文句で、そのまま『お持ち

帰り』がお決まりのパターン。　



社内の女性数人ともそういう関係でした。



それを丁寧に「実は先週、あの子と…　」なんて明るく（？）報告してくれる人でした。



でも、当初、僕はそんな先輩が大の苦手でした。



「チャラい。」「女好き。」「不真面目に生きている。」そんな印象でした。



そんな中、たまたま会話の最中にお互いバンド活動していることが解ります。


2人ともロックバンドのボーカル担当ということで一気に仲良くなりました。




Ｗ先輩はボーカル一本、華やかで、爽やか。


一方の僕はボーカル兼サイドギターの不良ミュージシャンを地で行くタイプ。


沢田研二と泉谷しげる、そんな両極端なタイプの2人でした。（泣）




そんな先輩が「俺、暫くの間、アメリカに行きたい。向こうの色々な場所を巡りたい。

だから会社を辞める。」と言い出した時にも驚きは有りませんでした。



そして、「で…、具体的に会社を辞めてどうするの？」という僕の質問に対して先輩が

「1年間、タクシー運転手やって渡航費用を稼ぐ。」と答えたことにも特別な驚きは有り

ませんでした。



ほどなくＷ先輩は会社を辞めて、大手のタクシー運転手として稼ぎ始めます。



勿論、先輩はバンド活動を続けていましたし、僕も先輩のライヴには出来る限り顔を出して

いました。




そんなＷ先輩の転職から、半年程が経過した頃でしょうか…




先輩のライヴが終了し、打ち上げの席でのことです。



Ｗ先輩が僕の隣に座って、いつもの感じでこう言いました。



「俺、今日、生まれて初めてハッキリと女の幽霊を見たよ。」



「今日？　何言ってるの？　一緒に社員旅行で幽霊見たじゃない。」



「違う、違う、あれは幽霊らしきモノ。　今日はハッキリ見たの。」



「え…、嘘でしょ？　何処で？」



「ことの始まりは、千葉へお客さんを乗せて行った帰りだよ。」



「ことの始まり？　千葉？　詳しく教えてよ。」





先輩は「先週の深夜、千葉の横芝へ行くお客さんを乗せた時…」と語りはじめます。



お客様が下車した後、幹線道路へ出ようと車を進めていた午前２時過ぎのこと。



街灯など一切無い、真っ暗な道を走っていると右側で白い大きな帽子を被って白い夏物

ワンピースを着た若い女性が手を挙げていたそうです。




辺りには畑と畦道しかありません。




「こんな真夜中じゃタクシーなんて捕まらないよ。　あの子、ラッキーだな。」

と先輩は気を利かせて、Ｕターンして女性の立っていた場所へ戻ったそうです。




が……




既に、女性の姿は跡形もなく無くなっていたというのです。




「それって見間違いじゃない？　深夜で疲れていたんだよ。」と言う僕に、



「違う、違う！　Ｕターンさせるまで対向車は無かったし、後続車もなかった。

俺がその子が居た場所へ戻るまでは１０秒位の時間だぜ。」


珍しく先輩は語気を荒げます。




僕は『絶対、見間違いだ。　先輩は以前、疲れていると電柱も人に見えるなんて言ってたし

…。』と気持ちを整理しようとした瞬間、Ｗ先輩はこう続けました。




「実はライヴの終盤、いつの間にかその女が舞台袖に居たんだよ。その時と同じ恰好で…」




その瞬間、僕は背中に冷たいモノを感じました。



彼女は真夜中にすれ違った瞬間から先輩のタクシーに乗り込んでいたのでしょう。



Ｗ先輩の魅力に惹かれて乗って来たのか？　



Ｗ先輩は自身の親切心から、彼女に憑かれたのか？




理由は、今もどちらか解りません…