凱旋門賞観戦記２

やっぱり僕は、オルフェーヴルの馬券は買えなかった。今までに、僕がオルフェーヴルを買ったレースは、阪神大賞典と天皇賞の２レースのみ、ゲンを担いだのだ。
妻が、単勝を５ユーロ買ったが、馬名も入っていないただのレシートの様な馬券で、記念馬券にもならない代物だった。もっとも、オルフェーヴルが勝てば、間違いなく妻は、この馬券を換金してしまうだろうが・・・

その後は、パドックを見学したり、やたらと甘いワッフルを食べたりしながら、場内を見て回った。メインスタンド前では、ジョッキー姿のピエロ達が、馬の頭が付いた棒に跨り、レースをしたり、派手な帽子を被って、ドレスアップした女性が闊歩していたりと、お祭り気分が高まっている。そして、時間と共に、メインスタンドは超満員となっていった。
ここでの観戦は、子供連れには難しいと思った僕達は、さっきのおじさんに教えてもらった、ポニー広場のある、コースの内側へと向かう事となった。それと、理由がもうひとつ。内側からなら、より近い場所から、オルフェーヴルを応援できると思ったのだ。

コースの内側から、ぼんやりとメインスタンドを眺める。
超満員のスタンドのあちらこちらに、競馬場の外で売っていた、オルフェーヴルのタオルが揺れていた。「あのタオル、買っとけば良かった・・・」僕は後悔していた。バス乗り場や、入場門前で、怪しげな兄ちゃん達が売っていたのだが、僕は当然、競馬場の中でも売っていると思い、買わなかったのだ。

子供は、ポニーを見た事と、やっと、自分で歩き回れる場所に来た事で、満足そうだった。子供の相手をしている間にも、緊張が高まってくるのを感じていた。


出走時間は１６時２５分、あと１時間余りで、オルフェーヴルの挑戦が始まる・・・