親父はコレで競馬にハマりました。

前回書いた通り、僕の競馬好きの原因は、親父の影響が大きいのだが、その親父が、如何にして競馬にハマったのか、それについては、少々興味深い話もあるので、今回はそれを書いてみたい。

僕の親父は公務員だった。働き始めて早い時期に、今は競輪の街として知られる、ある町に有った、とある競馬場の管理に関わる仕事に就いた。
配属されてすぐに、先輩から「自分が携わる仕事が、どんなもんか分からんでどうすんねん？一回、自分の金で遊んでこんか！」という、有りがちな、それでいて、実はあまり意味の無いアドバイスを受け、始めて競馬場に足を運んだそうだ。

競馬新聞を買い、胡散臭い「予想屋」の話を聞き、赤鉛筆片手に自分なりに予想をした上で、いざ馬券を購入する事になった。

ところで、今のようにコンピューターの無い時代（恐らく昭和３０年代の事だと思う）、リアルタイムのオッズを表示するモニターも電光掲示板も無かったその頃、如何にしてオッズを知ったのか？
もちろん、競馬新聞には予想オッズは載っていたのだろうが、最新の情報とはいかず、当然、パドックでの気配など加味出来るはずもない。
親父の話によると、当時は、馬券の購入窓口が各馬番・各枠番によって分けられていたのだそうだ。必然的に、人気のある馬の窓口には人が集まり、自然と長い行列が出来る。まるで、棒グラフの様に伸びた行列、それこそがリアルタイムのオッズになるという仕組みだ。なるほど、よくできている。

多くの関西人に同じく、行列に並ぶ事が嫌いな親父は、長い行列を見た瞬間に、自分の予想を握りつぶし、人気（ひとけ）の少ない窓口、つまりは、人気の無い馬番の窓口に向かった。
そこからは、よくある話。競馬の神様のイタズラで、親父の懐は膨らみ、親父は競馬の虜となった。
おかげで親父は、そのビギナーズラックで得た額の、数倍、いや数十倍を、ＪＲＡに献上し、その息子（つまり僕）までもが、せっせと飼葉代を払い続けるハメとなったのだ。

これは、あくまでも親父の話なので、多少の誇張や思い違いがあるかも知れない。もしも、当時を知っている方がいて、「そんな事は無かった」と思っても、ご勘弁願いたい。

それにしても、当時の単勝・枠番時代だったから良かったものの、今の競馬でそのシステムだったら、大変な事になっているだろう。馬連・単、三連複・単、挙句の果てにＷＩＮ５となると、いったいいくつ窓口を作らなければならないのだろうか・・・？