492件のひとこと日記があります。
2015/05/27 19:42
ダービーについて思うこと(その2)〜すべては馬の名誉のため〜
「ダービーを金で買うことはできない」
これは、僕が競馬の格言の中で最も好きな言葉の中の一つです。
1965年の日本ダービーの直前、1番人気のダイコーターが、橋元幸吉氏から上田清次郎氏にトレードされるということが起きました。ダイナナホウシユウでダービーを取り損ねた上田氏は、前年シンザンでダービーを制した橋元氏に、「あなたはもうダービーを取ったのだからもういいじゃないですか」と説得し、それに屈した橋元氏は多額でダイコーターを売却しました。
結果、ダイコーターはキーストンの2着に負けてしまいます。それ以降「ダービーは金では買えない」と語られるようになりました。ちなみに上田氏はダービーを制することができないままこの世を去りました。
ダービー関連の名言で最も有名なのは、中野渡元ジョッキーの「28頭立ての大外枠でもいい。賞金なんか貰わなくていい。他の馬の邪魔もしない。この馬の力を試したいからマルゼンスキーに日本ダービーを走らせてくれ」でしょう。
結局、マルゼンスキーはダービーに出走することができませんでしたが、11年後、息子のサクラチヨノオーが父の無念を晴らしてダービーを制しました。しかも内枠で、賞金も貰え、他の馬の邪魔もでき(しなかったと思いますが・・・)、力も試せるという好条件(?)で。
他にもダービー関連の名言では「僕はダービーに乗ったんじゃない、ヒカルイマイに乗ったんだ」「借金してでも金を集めて、アイネスフウジンを1番人気にしてやりたい」などが有名です。
これらの言葉がなぜこれほどまでに競馬ファンを感動させるかというと、それは騎手が自分の名誉のためではなく、すべては馬のためのことを考えた、馬が主役の発言だったからです。もちろんダービーはすべてのホースマンの夢なのですから、騎手自身も絶対勝ちたいに決まっています。それでも馬の名誉のことを考え、ダービーの栄冠を勝ち取ったことにドラマやロマンを感じずにはいられないのです。
僕は、日本ダービーの日に限って競馬の神様が降りてきているんじゃないかと思います。競馬の神様は馬の名誉を考える人間には栄光を、欲望にかられる人間には挫折を味わわせるのです。
「そんなことではダービーは勝てないよ」
神様はそう教えてくれているような気がします。
(その3へつづく)