萩Ｓ

◆父の血を緩衝し外回り向きの切れ味
タニノギムレットはブライアンズタイム産駒で強烈な決め手(８戦中７戦で上がり最速)を駆使してダービーを制した名馬。故障に泣いて早々と現役生活を終えたが種牡馬初年度に歴史的名牝ウオッカを送る大ブレイクを果たした。その後もコンスタントに重賞勝ち馬を輩出するなどロベルトの系統を支えるべく奮闘している。

そのロベルトの血を広めたのはギムレットの父であるブライアンズタイムだが御三家の時代が幕を閉じてからはすっかり衰退の途を辿り主戦場はダートが増えて菊花賞２着のスカイディグニティは久々の芝Ｇ１連対馬だった。ギムレットがGraustark[4×5]で元々ダート色が濃かっただけに繁殖としての判断は難しかったがサンデー系と配合しHail to Reasonのスピードクロスを発生させる事で成功への扉が開いた。

スマイルジャック、セイクリッドバレー、アブソリュート、オールザットジャズなど獲得賞金上位馬はほぼこの組み合わせ。ウオッカは母父ルションだが母系が日本古来のシラオキの系統でシスタートウショウなどスピードに定評があった点が名牝誕生の裏側とされる。サンデー系の軽いスピードを挟む事でギムレットのアクの強さが抑えられつつスタミナを補給をできる相乗効果を生んでいる。

ダンツクロノスは母がダンスインザダークの短距離馬。ザッツザプレンティやデルタブルースらスタミナ偏重の牡馬と逆に牝馬はジョリーダンスやザレマのようなスピード馬も多い。ダンス自身がダンシングキイという名門の出身だから父としてより母系に入ってより采配をふるい出すのは納得できる。祖母のリーガルジョイは米国血脈だから摩擦もなくサンデー系を取り込む成功の楚は踏襲しているからあとは馬のデキ次第。

新馬戦(阪神1800m)は1000m通過64.9のスローを先行集団を見ながら好位で折り合い、直線は団子状態を瞬時の反応で抜け出しカレンバッドボーイとの叩き合いクビ差抑えた。最速の上がり33.0はスローの産物だからともかくとして血統的な重さが足枷になっていないのは十分確認できた。これならディープインパクトやハーツクライにも負けない魅力がある。まだ絞れる体つきだし一度使っての上昇度は大きい。

◆Storm Catが不安の二世たち
ディープインパクト産駒は京都外1800m【24-14-12-59】勝率22.0％複勝率45.9％で文字通り質量共に断然の数字で軽くは扱えない。唯一の出走馬となったインパラトールは２戦目の未勝利で後方から追い込んで上がり33.8(２位)前走が稍重でラスト1F12.7を最速の上がり35.6で差し切って勝ち上がりで評価に苦しむ。

仏産の祖母マジックナイトはジャパンＣ２着馬で重賞４勝のマグナーテンが叔父だから血統背景自体は魅力だが母エジードにつけられたのがStorm Catでは中距離以上で活躍するには大きな減点。走りに我慢や粘りがなくなってしまう。Lyphardのクロスはジェンティルドンナと同じだからせめて前受けで窮地を凌ぎたい。

マジェスティハーツは【2-5-7-34】勝率4.2％と寂しい数字が並ぶハーツクライ産駒で母父ボストンハーバー×母母父Storm Catで脆さに脆さを重ねたミルフィーユ断層だからはっきり言ってクラシックは無理筋。祖母がタイキシャトルに土をつけた事で有名なテンザンストームだがこれにしても短距離の逃げ馬だから特に味はない。

◆適性も負けていなかったネオユニヴァース
ネオユニヴァース産駒といえばヴィクトワールピサやアンライバルドに代表されるように中山で瞬間移動出来てしまうほど小回りで機敏に立ち回るのが巧い。反対に直線の長いコースでは脚の使い所が難しく勝ち切れない場面も多々ある。しかし意外にもこの舞台では【12-5-3-55】で勝率はディープに次ぐ第２位(※出走５０以上)で単回収率も高い。

トーセンパワフルは言わずと知れたダービー馬ロジユニヴァースの全弟。ただHalo[3×5]でも大跳びで札幌コースが合わなかったように兄よりは外回り向きの決め手を兼備している可能性はあるだけに見直しておきたい。ラウンドワールド(コスモス賞→札幌２歳Ｓ２着)を新馬で退けているように素質は見劣らない。

ネオウィズダムは矢作師がディープブリランテ以上とダービー後にも関わらず唸った逸材(仮)新馬で逃げた馬に簡単に突き離された姿は逸材の名からすれば失笑ものだが前半5F59.7で自らレースを作りそのまま押し切った２戦目は成程見所あり。ムキになっていく面など幼さが抜ければ距離が持ってもおかしくないが現状は心配が先に立つ。母ゴレラはＢＣマイルやムーラン・ド・ロンシャン賞などで上位に食い込んでおり将来性はメンバー上位。