マイルＣＳ

天皇賞秋でダービー以来のＧ１制覇となったエイシンフラッシュ、エリザベス女王杯を外から力強く伸びて虹をかけたレインボーダリア。この２頭に共通するのは前走が内有利の東京で外枠だったこと。それでもエイシンフラッシュの毎日王冠は０秒６差(９着)レインボーダリアの府中牝馬ステークスは０秒４差(４着)で大きく崩れてはいなかった。もちろん好騎乗や展開、馬場など付加要素があってこそだが逆襲への布石は打たれていた。

春には惜しくも及ばなかったＧ１タイトルをドナウブルーが奪取する。デビュー２連勝を飾り３戦目のシンザン記念ではオルフェーヴルを差し置いて１番人気に推されたほど将来を嘱望された馬だったが勝ち気な性格が災いしてレースでは実力の半分も出せない時期もあったが３歳夏から秋にかけてじっくり大人になり準オープンの身で挑んだ今年１月の京都牝馬ステークスで初の重賞制覇。

スタートで少し後手を踏んだが馬群を縫って好位まで進出し４角では果敢に攻めて早目に先頭に立つと内から迫ったショウリュウムーンを封じこんだ。以前なら掛かるのを恐れて脚を使いづらい場面で鞍上の意のままに動けるなど成長を感じさせる勝利だった。ただ間隔が詰まったり輸送を挟むと馬体重が大きく減ってしまう弱点はなかなか克服できず更なる連勝を期待された中山牝馬ステークスは１１着に惨敗となった。

ヴィクトリアマイルはそれ以来で２か月近く休ませたこともあって馬体は回復したがレース勘の問題や当時の東京が内伸びだったことで７番人気止まりだったが豪州のＣ．ウィリアムズを背に快走。１６番から積極策で２番手につけ平均ペースに乗ると直線もスピード衰えず最後は半馬身差遅れたが内枠からロスなく回ったホエールキャプチャとの差がほとんどなかった事は誰の目にも明らかだった。

安田記念は初めての一線級相手にＨペースに巻き込まれ１０着に失速したが中２週での輸送にも耐えて馬体を維持したように内面の充実度が窺えた。レコード駆けの関屋記念も先行して上がり32秒6でまとめたようにスピードを余すことなく発揮できるこの戦法が板についてきた。秋はマイルＣＳ一本に照準を合わせて府中牝馬ステークスで始動。残り１Ｆでは沈むかと思えるほど反応が悪かったがなんとか３着を確保。

久々の影響で前半行きたがって余力が残らなかったし距離も見立て通り少し長かった。それでも堅実に伸びてきたしベストのマイル替わりで折り合いも楽になり直線の手応えも違うはず。混合Ｇ１での良績はないがＶＭ３着→府中牝馬ステークス１着から一世一代の大駆けをした０８年１着のブルーメンブラットの戦績と酷似していおり進境著しい４歳牝馬が目下の勢いで生涯一の大仕事を果たす可能性は高い。

この中間も順調にメニューをこなして最終追い切りは坂路で【4F52.9-3F38.1-1F12.4】手加減された前走時とは雲泥の差でまさにＧ１仕様の渾身の仕上げ。気合いをつけられると瞬時に反応して加速したあたりレースでの動きも格段に良くなる。ピンク帽を引いて状況は一見芳しくないが降雨の影響で内目はかなり荒れてきており外差し傾向を示しているし鞍上の天才Ｃ．スミヨンを信頼したい。偉大な名牝姉妹の誕生に◎を託したい。

ひと叩きで順当に良化してきた春のマイル王○ストロングリターンが強敵。毎日王冠は休み明けで５８キロを背負って０秒５差７着だから悪い内容ではないし外枠１２番だった分の評価も必要。安田記念は消耗戦の流れを最後グランプリボスと叩き合って１１秒９で締めて勝っているだけに展開に恵まれての勝利ではない。陣営は良績が集中する東京よりも平坦の方が切れるイメージがあるとまで話しているように上位争いは確実。

同馬主のダノンヨーヨーの回避によって出走叶ったダノンシャークも侮れない。京都では金杯とマイラーズＣ２着があるように決め手が存分に生きるコース。仕掛けが早かった毎日王冠が見せ場たっぷりの５着でマイルを走るには十分な持久力を示した。スワンＳは京都で初めて３着を外したが０秒２差４着。1400mではさすがに脚が溜まらなかった印象でじっくり勝負できる今回は更に躍進。

そのスワンＳを上がり33秒2の鬼脚で差し切ったグランプリボスは短期間での大幅馬体増で不発と思われた中での勝利。心身ともに完成の域に達していれば３つ目のＧ１獲得も現実味を帯びる。以下はスワンＳが大幅馬体増＋後方ポツンで怪しかった世界レコード保持者のレオアクティブ、中団あたりで追走できた時のマルセリーナの末脚、ペースが落ち着いて後続の伸びが今ひとつだった時のコスモセンサーを抑えておきたい。