ジャパンＣ

世界最強宣言をあと一歩で阻まれたオルフェーヴルの来年の動向次第では再戦の保証がないだけに最高峰の舞台で実現した同門対決で負けるわけにはいかない。ましてその日本の夢を打ち砕いた凱旋門賞馬も参戦してくる。世界に怪物フェノーメノの名を轟かす絶好機だ。一点の曇りもなく迎えた前走の天皇賞(秋)は競馬の難しさとしか思えなかった。

一流ジョッキーの巧さかつ鋭い嗅覚をもったＭ．デムーロの騎乗ぶりには素直に脱帽するが、かと言ってフェノーメノがエイシンフラッシュに実力負けしたとは露ほども考えられない。不運の伏線は古馬の大将格だったルーラーシップの出遅れ、シルポートの大逃げによる縦長の展開、それによるカレンブラックヒルら２番手集団が予想以上に消耗していたこと。

これらが重なって結果的にフェノーメノは直線入り口から早めの仕掛けを余儀なくされ後続の目標となってしまった。確かに混戦だったとはいえ１番人気を背負っていた側面からマークは当然の見方が正しいが戦前からあくまで３歳の挑戦者たる位置付けだったフェノーメノにとっては要らぬ火の粉を被った格好となってしまったのは想定外だった。

それでも前半5F57.3をスタートを出たなりで４番手につけ道中も息の入りにくい流れを積極的に動いていく堂々たる競馬はまさに正攻法で「負けて強し」改めて実力を証明した。展開は厳しくなったが先行持続型で長くいい脚を使えるからあの競馬は間違っていない。ただ今回は逃げ馬不在でスローの濃厚。瞬発力で勝る馬はいるが今度は己の力で栄光のＶロードを切り開く。

３歳馬の優勝は９８年エルコンドルパサー、０１年ジャングルポケット、１０年ローズキングダムの３頭でローズキングダムも繰り上げ優勝だから狭き門といっていいが２着?３着の善戦は目立つ。フェノーメノはセントライト記念から天皇賞(秋)の変則ローテ。距離的な負担が菊花賞より少なく済んでいるのは悪くないし一流の古馬相手に好走経験があるのは強み。シンボリクリスエスやディープスカイ級の実績はないがドリームパスポート、コスモバルクより劣るとは到底思えない。好走馬が毎年のようにいる以上は疲労を理由に優勝を譲る理由はない。

本当に完璧な仕上げだった天皇賞からの上積みが望みにくいのは陣営も認める事実。とにかく前走時の状態を維持することに努めていたが中間の気配も良い意味で平行線。直前の追い切りも普段通りＷコースに入り長めから負荷をかけられ直線で促されると素晴らしい反応で軽快に駆け抜けた。煙幕を張っているがこれはダービー前と同じだからむしろ歓迎だ。

叔父は無名だった９９年のジャパンＣでスペシャルウィークの２着に入ったインディジェナス。ダービーでも好走している距離だから心配など全くないがあらためてこの舞台に非常に高い適性のある点を確認しておきたい。母父デインヒルを介してスピードを内包した柔らかい米血脈を補給しつつ大一番で威力を発揮するRibot5×5は凱旋門賞２着のナカヤマフェスタの強化版と２歳冬の時点で評価し見事に成長したフェノーメノに渾身の◎だ。


帰国初戦であるオルフェーヴルの扱いが最大の焦点。この秋の目標が凱旋門賞であったこと(前哨戦も使った)そして走破時計が２分３７秒６と掛かっているように通常でも深い芝でタフさが要求される馬場が雨の影響で更に悪くなっていた中での激走、これらを踏まえれば万全の仕上げにもってくるのは難しいはず。

直前はいつも通り坂路で追い切られ【4F53.9-3F39.2-1F12.9】馬場が悪かったとはいえ朝一番で一杯に追われてトップ１０に入ってこないのは物足りない。しかも急激にヨレるアクシデントもあった。あまり不安要素として報道されないがレース後に、思えばアレが“危険信号”だったと語られる気がせずにはいられない。仕上がり途上で大外から差せるほどジャパンＣは甘くない。

怖いのは目覚めた天皇賞馬エイシンフラッシュだ。あの一瞬の脚を使うにはインでギリギリまで我慢して解放させるしかない。ダービー、有馬記念(２着)ともに道中は内をキープしていた。前走より流れは遅くなるし今回は８番枠だからより競馬はしやすいはず。毎度だが調教も抜群に良いし手綱もＣ．ルメールに替わったが不安はないだろう。

休み明けの前走が２０キロ近く増えて、とても走る体つきには見えずレースも出遅れたルーラーシップだったが直線は上がり最速33秒1の末脚で追い上げて０秒３差だから凄まじい内容で叩いての上積みの面では文句なくメンバー随一。フェノーメノ同様に先行持続型だから先行大好きのＣ．ウィリアムズは怖い存在。秋華賞から迷いなくジャパンＣへの挑戦を決めたジェンティルドンナも５３キロが味方する。