ラジオＮＩＫＫＥＩ杯２歳Ｓ

ＪＲＡ賞の最優秀２歳牡馬は朝日杯ＦＳを優勝したロゴタイプで事実上決定だろう。それでも２歳王者決定戦と銘打たれた朝日杯よりメンバーが揃うことのあるラジオＮＩＫＫＥＩ杯２歳ステークス重要視論が熱く語られるのは毎年の恒例。格付けの交換という案も聞かれるがそれには賛成しかねる。競走の番組も出鱈目に作られているわけではないからだ。

ＪＲＡ賞の歴史は長い。2000年の馬齢表記改正まではＪＲＡ賞最優秀３歳牡馬の名称で表彰されていて、賞名および表彰団体も啓衆社賞、優駿賞、ＪＲＡ賞と引き継がれてきた。1954年にメイヂヒカリが受賞して以来５９頭(86年にメリーナイスとゴールドシチーがＷ受賞)がこのタイトルを獲得している。

ただ朝日杯か阪神３歳ステークス(現阪神ＪＦの前身にあたるが90年までは混合戦で関西の３歳王者決定戦だった)の勝ち馬以外から選出されたのは56年ライジングウイナー(８戦８勝)と64年キーストン(５戦５勝)だけ。冒頭で事実上と少し濁したのはこの背景を配慮してだが00年の未勝利勝ち直後のメジロベイリーとクロフネ、ジャングルポケットを撃破したアグネスタキオンなどの関係を見ると唸らずにはいられない。

それでもチャンピオンを決めるのはＧ１なのだ。これは別に間違っていない。今年も朝日杯には牡馬が勝った２歳ステークスと名のつく重賞馬はすべて出走してきた。最優秀２歳牡馬も未来を拓く立派な勲章だ。にも関わらず２歳でデビューしながらこの舞台に目もくれないのは２歳王者とクラシックではもはや別軸に位置するものだからといって過言ではない。

現実に暮れの中山マイルからクラシックの頂点へ羽ばたいたのは94年のナリタブライアンまで遡るし連対を含めても10年ローズキングダムと２頭のみだから寂しさを越した惨状だ。クラシックを目指す馬たちにとってはラジオＮＩＫＫＥＩ杯は年の終わりでありここからが始まり。勝てばそう遠くない将来への展望が一気に明るくなる「出世手形」を賭けた争いになる。

登録段階から大幅に減った７頭立てに集約されるようなレースの下馬評は『三強』これは確実でどれもクラシック級の逸材だが溢れるスケールの大きさでキズナが一歩リード。デビュー前から陣営が高い評価を与えていた馬だが噂に違わぬ非凡な能力を発揮して新馬→黄菊賞を連勝。一方的な買い被りの尽きない世界だがこれは限りなく本物に近い。

ここまでの２戦は折り合いの苦労もなく直線も気合いをつけられた程度で瞬時に反応し完勝。すでに完成した古馬のような操縦性の高さは折り紙つき。辛口ジャッジで知られる佐藤哲三騎手に「この馬は作っていくような馬ではない。自分が能力を出すのにマイナスになることをしなければ馬が連れて行ってくれる」と言わしめたほどだ。

ゴールが近づくにつれ加速ラップを踏んでいるように抜け出してからも伸び続けているから距離延長も心配ない。ただ個人的に今、頭を悩ませているのは血統面。距離が延びれば延びるほど一本調子なスピードと底力に欠けるStorm Catの血が入るのはマイナスと解説してきた手前、この大きな矛盾をどう覆すのか本当に難しい問題だが贔屓目抜きに走法や体型も中距離以上でこそに映る。

シーキングザダイヤやメイショウボーラー、最近だとショウナンマイティあたりは2000mもこなしているが本質的にはもって1800mの印象が強い。しかし唯一にして最も活躍したのが半姉のファレノプシス(エリザベス女王杯、秋華賞など)である点は心強い。１５年の時を経て再び巻き起こす血の大革命。威風堂々勇躍とクラシックの主役へ。

シーザリオの仔エピファネイアの大物ぶりも甲乙付けがたいが京都２歳ステークスは前半鞍上がなだめるのに骨を折っていたように現状の完成度としては劣る。ならば過去10年で重賞連対経験馬が【3-3-2-2】という実績面を評価してラウンドワールドを対抗にする。札幌２歳ステークス(２着)は３角過ぎからの外捲りで見せ場たっぷり。

外枠の不利を跳ね返すには至らなかったが上がり3F12.0-11.6-11.3の加速ラップを最速の脚で詰めているしコディーノを物差しにすればここでもヒケはとらない。半兄に皐月賞２着、ダービー３着のドリームパスポートで成長力も申し分ない。あとは三強に万が一破綻があった時の保険だが血統的に面白いのは近親にアドマイヤフジとアドマイヤコスモスがいるアドマイヤドバイ。マイル戦とはいえ前走の勝ち時計は優秀だった。