若駒Ｓ

◆足し算でも１にはならない血統の奥深さ
近年の競馬界を背負って立ってきたといって過言ではないのがステイゴールド×メジロマックイーンのステマ配合。ＭマックイーンのＳゴールド以外との繁殖成績を考えれば奇跡的ニックスだ。その先駆け的存在となったのが母オリエンタルアートののドリームジャーニー。とにかく脚捌きに無駄のないピッチ走法で小回りを機敏に動くのが大得意だった馬。

その必殺高速捲りでブエナビスタやディープスカイを沈めた。手前を替えない影響などもあり左回りは走らなかったがそれもご愛嬌、そのくらい小回りを捲らせたら右に出るものはなかった。そのドリームジャーニーが全ての面において進化し完全体となったのが３冠を含むＧ１(５)勝のオルフェーヴル。

ノーザンテースト的な硬さがあった兄とは違い父と母父の両方から柔らかさとしなやかさを受け継ぎストライドが伸びる走法で大きく動けるから東京やロンシャンでも安定する。それでいてノーザンテーストの俊敏さも備えているから有馬記念のように小回りでもフットワークを乱さず急加速できる。身体能力だけならまさに競走馬の理想を追求しきった姿だ。

その全弟にあたるリヤンドファミユは偉大な兄を追う義務や期待がデビュー前から、いや誕生の瞬間から宿命づけられていたのは間違いない。まして名前の由来である“家族の絆”は震災の復興を祈願して命名されており重荷にもほどがある。ただそういう部分を一切排除して馬を見れば至って標準級。ドリームジャーニーほどではないがコンパクトで伸びのない体型だがいざ走らせると跳びも大きく良い走りをする。

ただオルフェーヴルのように体全体を使ったバネを効かせた走りではないから伸びそうで伸びない。だから接戦になる。ドリームジャーニーもオルフェーヴルも好調時は推進力が物凄くて一瞬で置き去りにしたから馬体を並べて叩き合うシーンはほとんどなかった。あえて言うなら兄たちをそれぞれ１とすると0.5ずつ似た部分を貰っているが足しても１にはならない感じ。比較対象が大きすぎるので過小評価気味になっている恐れはあるが現状の能力だと重賞では埋没してしまうかもしれない。

◆完成度重視のマイラー
万両賞で大外一気を決めたアドマイヤオウジャ(父ディープインパクト)の母Shes All EltishはボニーミスＳ(米9FG2)の勝ち馬で純米血脈。ＤＩにこの配合の代表がリアルインパクト(安田記念)やダノンバラード。仕上がりが早いスピード型に完成しやすい。一方で距離や成長力の面において壁にぶつかる傾向にある。

日本で主流となっているヘイローやロベルトを経由しないパワー型のTurn-to系で力の要る馬場で強いのは納得できる。前走の芸当から間違いなく重賞戦線で活躍できる馬だがあくまで極限まで弓を引いた状態が前走。色気を出すと終いが甘くなる可能性があるしコース的にも今回の条件は有利ではない。毎日杯→ＮＨＫマイルカップが面白い。

◆ジリ脚血統が生涯一の大激走も
タガノバスターは祖母がソロシンガー(報知杯４歳牝馬特別３着)で叔父にラントゥザフリーズ(共同通信杯)だから見立て通り３歳戦向きの血統。スピードや切れ味を補給する血がないから母父ダンスインザダークのスタミナとグラスワンダーのパワーで先行して粘りたい。だからトラックバイアスが発生している今の京都2000mは条件適合。リヤンドファミユとアドマイヤオウジャに土をつけるなら今回しかない。

ホープフルＳ４着のミヤジタイガも母系が馬力を基調とした配合だから小回り自体は合うが同じ父ネオユニヴァースのヴィクトワールピサやロジユニヴァースと違ってHaloのクロスがないぶん勝負所の動きが緩慢で上手に捲って行けないのが難点。前走も位置取りは良かったが直線に向くまでにもう少し前で競馬しないと決め手不足で辛い。経験を買って抑える程度。

メイケイペガスターは新馬戦(阪神1600m)が鮮やかな差し切りでデイリー杯２歳ステークスで１番人気に推されるも１１着に惨敗。さすがにあれが全能力とは思えないが父フジキセキ×母母父Silver Deputyだとカネヒキリ(母父Silver Deputy)に近く、更にブライアンズタイムを挟むともうダート馬にしか見えない。距離も危険水域だし芝でも京都より阪神だろう。

唯一の牝馬であるノースパストラルは祖母のパウダースノーがアウトブリードで主張がなく父キングヘイローが持つSir Gayload［5×5］がＯＮになってナスキロ的な柔らかさが伝わってカワカミプリンセスのように芝で切れる脚を使う。初戦がイレ込み＋フケによる惨敗で競走以前の問題もあるが母ブランピュールが阪神ＪＦ３着のように落ち着いてくれば重賞でも見所はある。