チューリップ賞

阪神ＪＦは3F34秒1-4F45秒9-上がり3F12秒2-11秒5-12秒7＝「1分34秒2」の決着で06年ウオッカの「1分33秒1」を別格(※改修直後で芝の養生が大変良かった)とすれば07年トールポピーの「1分33秒8」に次ぐコース改修後歴代３位の好タイム。前半のペースだと06年3F34秒4-4F46秒3や07年3F34秒4-4F46秒2よりずっと速かったのが12年世代。

「内有利」のバイアスを考えても馬群を縫って最後追い比べを制したローブティサージュの強さは認めるべきだが時計的価値が上昇する段になってじわじわ目立ってくるのは驚異的な粘り腰で２着に残ったクロフネサプライズの方。間隔が空いていた事や大幅馬体重増で１５番人気と嫌われていたが低評価を嘲笑う快走だった。これはフロックではない。

この２頭が本番の桜花賞までそっくり同じ舞台で戦えるのは限りなく優位と思える。06年以降の始動戦は阪神ＪＦ優勝馬が[1,2,1,2,1,3]ＪＦ２着馬が[1,不,2,2,1,1]どちらも実力に見合った成績を収めているが女王がいずれもチューリップ賞からの王道を選択した一方で２着馬は一度もチューリップ賞に出走せずの記録である点は興味深い。

それどころか阪神ＪＦの再戦がチューリップ賞で実現するのがなんと阪神３歳牝馬ステークス時代のビワハイジ、エアグルーヴ以来１７年ぶりの出来事(当時は暮れの半馬身差をエアグルーヴが５馬身差で大逆襲を果たした)特に関係の無い話だがＨレベルで凌ぎを削った２頭が再度直接対決をすればと想像した際の結末予想は難しくないか。

ただしあくまで前哨戦である。賞金の足りている組は本番出走が目標ではない。大敗は駄目でも調整と割り切って臨める立場である。事実ローブティサージュ、クロフネサプライズともに追い切りの時計や動き自体大きなマイナスはなかったが前者は帰厩後の調教本数が少ない印象だし後者も余力残しが伝えられている。

もう一つ視点を変えて“暫定的”な不安を挙げると高速決着だった07年世代が伸び悩んだこと。桜花賞までに１７頭が出走(２着レーヴダムールは故障)して[1-4-5-30]この中に1?3人気は10頭いた。１勝もエイシンパンサーのダートだから芝は未勝利。この世代の桜花賞馬は阪神ＪＦ６着のレジネッタ、２着で大波乱を引き起こしたエフティマイアは１７着で比較的消耗が少なかった。

他の世代は重賞２勝は堅いのだが著しく悪かったのがトールポピーの世代とアパパネの世代も重賞どころか芝未勝利だった。単純に世代の実力差を反映しているだけかもしれないがローブティサージュ世代もここまでは1?3人気が5頭で[1-2-1-4]メイショウマンボがこぶし賞を勝ったし大半は未出走で本格始動もこれからだけに時期尚早だが反動云々も少し心に留めておきたい。

前フリが長くなったが狙いは権利獲得に集中する本気度の高い馬、既成勢力(特に阪神ＪＦ出走馬)とは未対戦の遅れてきた素質馬、これに主眼を置きたい。ダイワスカーレット、メジャー兄妹やヴァーミリアンなど数多くの名馬を誕生させてきた日本競馬の至宝スカーレットインクのひ孫レッドフォーチュンに期待したい。

この一族はとにかく春のクラシック戦線に強い。前出のダイワスカーレット(チューリップ賞２着→桜花賞１着)ダイワメジャー(スプリングＳ３着→皐月賞１着)ダイワルージュ(アネモネＳ１着→桜花賞３着)ダイワファルコン(弥生賞３着)ブルーリッジリバー(桜花賞２着)スカーレットリボン(報知杯４歳牝馬特別)など権利奪取のイロハを持っている。

母スギノフォルモーザはヴァーミリアンやサカラートの母スカーレットレディの全妹でダート色が強く実際に砂でデビュー２連勝を飾り初芝のサンスポ４歳牝馬特別で大敗しているが性能の高さで克服してしまうのがこの血統。レッドフォーチュンの父クロフネも仕上がりが早くＴＲ向きの馬が多く当該レースでもホエールキャプチャやオディールが好走しており相性が良い。

新馬(京都1800m)は前半5F64秒4の超スローで実質上がり2Fの決め手勝負。脚を余した感じの４着だったが勝ち馬が２番手を進んだトーセンソレイユ(エルフィンＳ)なら悪くはない。前走は好位につけたが４角で外から蓋をされる厳しい展開。それでも直線一頭分のスペースをこじ開けて最後は２着馬を競り落とした。素直な気性、馬群にも怯まない精神力、追って味のある末脚。久しく離れた名門の春に吉報を届けたい。