阪神牝馬Ｓ

先週の土日は所用で馬事公苑を訪ねることになった。立地的には東京競馬場のある府中よりよっぽど手軽に行ける範囲だが案外近すぎると足が遠のくのはただ単に筆者が物ぐさなせいだろうか。それより何より「馬事公苑」という、お役所的ないささか堅いネーミングから期待の度合いも薄れていた気もするが想像を遥かに越える立派な場所だった。

概要にさらっと触れると競走馬の走っていない競馬場というイメージで敷地面積こそ東京ドーム５６個分ともされる東京競馬場には及ばないが規模的にはこちらも東京ドーム４個分ほどあるとの事ではっきり言ってかなり広い。主に馬術がおこなわれる障害のある会場を中心に厩舎、診療所、装蹄施設も整っており馬事公苑全体が馬の町になっている。

当日はちょうど「桜まつり」が行われており、少し気の毒な寒さだったが屋外にはたくさんの模擬店や催しで賑やか。正門から少し歩いて奥へ進むとそれはそれは艶やかな満開の桜がお出迎え。まさに見頃で日本庭園をバックに堂々と咲き誇っていた。その下ではお花見を楽しむ人の姿も土曜にはかなり見受けられたし好天であればもっと良かっただろう。

競馬好きとして他に目を引いたのが現役を引退し、余生を送る元競走馬たち。朝日杯ＦＳを勝ったマイネルレコルト、北九州記念など短距離での鋭い末脚が個性的だったサンダルフォン、中山大障害を制したギルデッドエージなどが放牧され静かに草をむしっていた。激戦をくぐってきたとは思えないほど穏やかな表情が印象的だった。

他にも馬術が目の前で楽しめる造りになっていたり、先着順で乗馬体験できるイベントや馬事公苑１５期生の柴田政人元騎手が寄贈した日本ダービーを勝った時の鞍などが見学できる馬の博物館など目白押し。休憩所などにグリーンチャンネルが映っているテレビがあるのはＪＲＡの管轄ならでは。イベントが予定されているＧＷには是非足を運んではいかがだろうか。

阪神牝馬ＳはＶＭ連覇を狙うホエールキャプチャを筆頭に充実顕著のハナズゴール、サウンドオブハート、アイムユアーズなど擁する４歳世代が７頭。これに昨年の１?３着馬など前哨戦としてはかなり層の厚いメンバーが集まった。阪神1400mと東京1600mの相反する適性については度々説明してきているがこのメンバーが本番で一頭も馬券に絡まないというのは想像し難い。

力が抜けていて連続で好走するか、ここでは少し適性がズレていてチョイ負けして本番で勝ち負けに持ち込むか。おそらくこのパターンだと後者をなぞる、もしくはなぞらせたい陣営が結構いるはずだ。ホエールキャプチャ、マルセリーナ、フミノイマージンあたりはこの距離で無理に走らせる必要のない実績馬で叩き台が濃厚。

ハナズゴール、サウンドオブハートも東京マイルの方が向くと思うが先輩牝馬と比べ消耗が少なく勢いがあるだけに評価下げは禁物だろう。ＶＭよりまずは目先に集中の４歳イチオクノホシが面白い。デビュー２連勝で阪神ＪＦ(４着)に駒を進め、３歳のクイーンＣ(２着)ではヴィルシーナを抑えて１番人気になった素質馬。

その後はフィリーズレビュー４着、桜花賞１１着と下降線を辿り、夏には準オープン落ち。そこでも５戦して３着３回止まりだが着差は最大で０秒４だから見限りは早計。ゼンノロブロイ産駒は比較的仕上がりが早く完成度の高さが目立つがイチオクノホシは根が晩成なのだろう。現状やや過渡期だがデビュー時から２０キロ以上馬体を増やして目下成長中。

つくべきところに筋肉もついて心なしか同じ切れる末脚でも質の異なるワンランク上に熟成しつつある感じがする。前走のうずしおＳにしても経済コースを逃げたメモリアルイヤーに対して終始外を回っての時計差なしの３着だから価値がある。条件戦、重賞に関らず阪神1400mで好走歴のあった馬は非常に有利。

08年１着エイジアンウインズ(心斎橋Ｓ)2着ブルーメンブラット(阪神カップ３着)09年ジョリーダンス(阪神牝馬Ｓ、阪神カップ２着)10年１着アイアムカミノマゴ(フィリーズレビュー２着)11年３着スプリングサンダー(うずしおＳ１着)12年１着クィーンズバーン(うずしおＳ３着)など毎年のように圏内の活躍。切れ味抜群の調教で気配は絶好。Ｃ．デムーロも二度目の手綱。伏兵の域を出ない今回◎に指名する。