札幌記念

皐月賞馬ロゴタイプとＧ３連勝中のトウケイヘイローが人気を分け合う今年の札幌記念。結論から言えば思い切る値打ちがある。函館ロングラン開催も佳境。いい夢を見た人も痛い目にあった人もこの２か月で「洋芝の魔力」を思い知ったはずだ。基より独特のレースを呼ぶ洋芝が疲弊してくれば、これはもう日本競馬のガラパゴス地帯だ。

ロゴタイプ、トウケイヘイローに共通するのは平均して長くいい脚を使う持続型ラップ向きだという事。

１３年皐月賞12.0-10.6-11.5-11.6-12.3(5F58.0)12.1-12.0-11.9-12.0-12.0＝「1分58秒0」

１３年函館記念12.2-11.0-11.7-11.8-12.1(5F58.8)12.1-12.0-12.0-11.6-12.1＝「1分58秒6」

両方とも緩急のないバランス均衡型ラップ。本来ならいかにも小回りの立ち回りが巧いタイプだが落とし穴は馬場。皐月賞は最終週でレコード、函館記念も過去10年で２回しかない58秒台の決着でスピード優先の持続型が最も有利に運べる条件だった。

ロゴタイプは朝日杯ＦＳも前半のＨペースから大きくラップを落とさず押し切ったし、トウケイヘイローの鳴尾記念は自ら主導権を奪った地点とラスト12秒0になるまで11秒台を連続させ始めた地点が同じだ。

現状の函館を考えればＧ２クラスでも２分０秒台前後は掛かる(雨の降り方によってはそれ以上もある)欧州色の強いNorthern Dancer系のスタミナ馬がバンバン来ている事も踏まえれば後半は時計以上に過酷な消耗戦が展開されるのはほぼ間違いない。

ロゴタイプの父ローエングリンはシングスピール×カーリングで完全な欧州血統。自身もフランスのＧ１好走歴があるようにサドラーズウェルズ系にカテゴライズされるがあくまでロゴタイプの個体を重視した見解だと今回は不向きな条件。内容にもよるがこれで連対を確保するくらいならダービーはもっと接戦だったはず。

トウケイヘイローの父ゴールドヘイローは地方のダートで５勝したのみで重賞すら勝っていないにも関らずこういう活躍馬を輩出するのだからサンデーサイレンス恐るべし。プロフィール通り、産駒もパワー型が多いからトウケイヘイローも血統傾向からすれば重い芝質の方が数段合っているが個体特長的には割引材料になる。

逆に勢いのある２頭に隠れて影が薄い実績馬ルルーシュ(母母父ダンシングブレーヴ)や２年前の覇者トーセンジョーダン(父ジャングルポケット)重い芝絶好のレインボーダリア(父ブライアンズタイム)あたりは能力、適性どれをとっても買える材料が揃った。この辺りが着地点としては正解かもしれないがここはアンコイルドでもう一段階大きく張りたい。

白富士Ｓ快勝後はひと息で気を揉んだが函館記念２着で光明が射した。後方待機でほぼ何もせずに終わった巴賞から一転、スタート直後から出して行き道中はトウケイヘイローをマークする格好。直線は離されてしまったが逃げ馬にラスト2F目で11秒6を使われては仕方ない。むしろ最後まで粘って後続の追い上げを阻んだ点を評価したい。

スピード優先の持続ラップ型であるロゴタイプやトウケイヘイローと違って急加速できない弱点はあるがパワー優先の持続ラップ型だから消耗戦になれば俄然出番は回ってくる。ナスキロの配合も褒められるがアンコイルドの場合はLyphardのスタミナで受けてこその真価発揮がしっかり判明した。

父Giant's Causewayは遡ればNorthern Dancer系で母父AlzaoだからNorthern Dancer4×4。現役時代は愛チャンピオンＳなどＧ１を６勝し、生涯連対を外さなかった勝負根性や精神面の強さから「アイアンホース」の異名をとった万能の名馬。底力勝負は望むところ。

富士Ｓ→マイルＣＳを連勝したエイシンアポロンや小倉日経オープン３着から朝日ＣＣ２着したエーシンジーライン、準オープン勝利直後に京王杯ＳＣを制したスズカコーズウェイなど好調期は相手関係なく戦える血統だからＧ２挑戦も臆することはない。運命の分かれ道になりそうな４歳夏。北の大地から勇躍羽ばたく姿に期待を込めて◎だ。