デイリー杯２歳Ｓ

◆希望のアウトブリード
レディオブチャドは仏Ｇ１・マルセルブサック賞(8F)やＧ２・アスタルテ賞など通算８戦４勝の成績で社台に購入された。サンデーサイレンス産駒の初仔アフリカンビートは一時的ではあるがクラシック候補と騒がれ、その後もボーダレスワールド(４勝)ポールアックス(４勝)ジュエルオブナイル(小倉２歳Ｓ)などコンスタントに活躍馬を送り出すなど質の高さが魅力。

個人的にもＰＯＧで注目していた血統でエミクーシとサブラタは指名していたが不運もあり共に未勝利と残念な結果。３世代ほど不振だったがオースミチャドの登場で久々に光明が差した。新馬戦(阪神1400m)は台風による順延後の競馬だったがその影響を微塵も感じさせない楽勝劇。

互角のスタートを切ると先行争いを避ける形で中団に控えての追走。馬群は縦長となったが前半3F36秒5-4F48秒1はかなり緩い流れ。それでも徐々に前との差を詰め、先頭集団を射程圏に捕え直線に向く。十分に手応えを残したまま馬場の外目を追い出されると上がり最速の脚で一気に突き抜けた。

非凡なスピード能力に、デビュー戦とは思えない落ち着き払った姿に大器の片鱗を窺わせた。騎乗した福永騎手も「イメージ通りの競馬」と操縦性を評価している。ある程度仕上がっていたとはいえ余裕のある体つきに加え、坂路での調教タイム(新馬直前は4F52.8-1F13.7)を考えれば一度使っての上積みは大きい。

ネオユニヴァース産駒は芝重賞を１６勝しているが京都ではネオヴァンドームのきさらぎ賞だけで東京も２勝。残りは阪神の内回りや中山、札幌、小倉だから要は上がり勝負だと分が悪い。通常なら京都で一番手に買う血統ではないが「ひょっとすると」の期待を抱かせてくれる馬。淀の地から羽ばたいた偉大な先輩ヴィクトワールピサやアンライバルドを重ね合わせつつ見守りたい。

◆俊敏性に特化した牝系
アトムは半マイル49秒5の超絶スローを内でなだめて、直線で末脚を爆発させるいかにもディープインパクトらしいレースで新馬を差し切った。残り2F目までまるでピッチが上がらず凡レースに近かったがラスト10.9-11.3をしっかり抜け出したのはさすがの斬れ味。

母シャイニングエナジーは米Ｇ１・ゲイムリーＳ(9F)の勝ち馬でその父Rahyは中距離級で世界的名馬ファンタスティックライト(愛チャンピオンＳ、ＢＣターフetc)を輩出する一方でフライングアップルやグラスワールド、トキオパーフェクトなど短距離での速力を武器とする馬も多く意外性と万能性を備えている。長距離のメイショウクオリア、ダートのマグニフィカ、ヒラボクキング、短距離のサンディエゴシチーなど母父としても幅広い適性は証明済みだ。

アトムはHalo[3×4]で無駄のない脚捌きやRahy的なスプリンター体質を受け継いでいて、それが道中の我慢の効き具合や反応の素早さなど随所に見られた。ついでに言えばサンデー系にLyphard[4×5]だから差す競馬だと限界はある。条件的には京王杯２歳ステークスや朝日杯ＦＳだが決め手を過信して大胆に立ち回らなければ京都マイルでも好勝負。

◆隠れた京都巧者
アグネスドリームは行った者勝ちとはいえ、極悪だった函館の最終日の馬場を最後突き離している訳だから持久力もあるが本質的なスタミナではなくダートの短距離馬だった母アグネスカルミアのパワーと突進力が大きい。マンハッタンカフェ×ミスプロ系はアントニオバローズやダイワバーバリアンのように京都で流れ込むのが得意だし距離短縮と軽い馬場替わりで面白い。

新潟２歳Ｓはバテないスタミナ型が強くて母系がスペシャルウィーク×ミスプロ×Deputy Ministerの配合でスタミナ、パワーにおいては満点だったピークトラムが３着したのも今となっては頷ける。叔父のタッチミーノットも似た習性。その点でとにかく軽さが要求される京都マイルだと苦しい面はあるが前走33秒台の脚に免じたい。

ライザンはダービー馬ロジユニヴァースと同配合だが母ライジングクロスが英Ｇ２・パークヒルＳ(芝2950m)の優勝馬でHalo≒Sir Ivorのニアリークロスだから母系のスタミナで走る馬。新馬を見てもマイルだと反応が今ひとつだし、京都だと多少渋っても厳しい。小回り向きの中距離馬。

ホウライアキコはヨハネスブルグ×サンデー×Woodmanだと柔らかすぎるし気が良すぎてマイルは長い。

プライマリーコードはフサイチエアデールの甥。「クロフネのＡ級馬は母もＡ級馬」に則ると少し外れるか。