秋華賞

牡馬の菊花賞は個性に合わせた適性重視で世代上位馬が回避するケースも少なくないが牝馬の秋華賞はオークスから距離短縮となるため阪神ＪＦから一連のまとまったストーリーとして成立しやすい。春に実績を残した馬が順調に駒を進めれば大きな勢力図の変化は起きない。それは有力馬が始動に選びやすいローズＳ組が秋華賞過去10年で【8-8-3-25】と驚異のシェア率を誇っている事からも明白。

読み解くべきはトライアル⇔本番の複雑な構造。まずコース形態の違い。そして仕上がりの差。前者は外回りで差し脚を生かした馬が内回り替わりでも緩みない流れに乗じて台頭するパターンもあるのであまり気にする必要もないが、後者はある意味では頭脳戦だから難しい。３冠牝馬スティルインラブ(５着)アパパネ(４着)も沈んでいる。

近10年でローズＳ、秋華賞を連勝した馬は３頭いる。前述のローズＳ組が圧倒的優位のデータと照らすと若干信頼度は落ちる。しかも連勝したのは春に戴冠して、後に王道の古馬Ｇ１で優勝するほどの実力を持った07年ダイワスカーレットと12年ジェンティルドンナ。仕上がり途上でも同世代は蹴散らすような異次元級の力を備えていないと厳しい。(残りは05年エアメサイア)

今年の場合はローズＳが重馬場の超Ｈペースだったので輪をかけてややこしい。先手を奪ったピクシーホロウが1000m通過58秒2で飛ばし、上がり3Fは11.9-12.5-13.7で１着デニムアンドルビーは向正面最後方からやや捲って４角１２番手からの追い込み、２着シャトーブランシュが４角１７番手、３着ウリウリも中団からの差しで完全なズブズブ決着となった。この前哨戦の結果を鵜呑みにするのは危険だ。

軽い馬場替わり、自在性ある脚質でローズＳ３着から前進必至のウリウリに◎を託す。ローズＳは中団後ろのインに控えて、直線は馬群割って激しい消耗戦の中を３着確保で権利をゲット。これだけで馬体重維持に苦しんだ春先のひ弱さが解消され、逞しく成長してきたことが分かる。

元々、チューリップ賞６着やアネモネＳ４着など惜しい競馬をしていた馬の泣き所が無くなって本格化してきたのだから前回の好走も驚けないし、むしろ条件が好転するＧ１の今回こそが本領発揮の時である可能性が高い。京都では【1-1-0-4】着度数的には強調できないが２着は白百合Ｓで、エルフィンＳは出遅れながらも最速の上がり33秒4という素晴らしい斬れ味で追い込むなどオープンでも好走。淀ではオール掲示板で負けた時の着差も最高で０秒４差以内、相性の良さは大きな強み。力の要る阪神より京都が合うのは間違いない。

ゲートセンスがよく、器用さもある。マイルでも先団にとりつける脚があるし、控えても十分持ち味は生かせる。展開が読みづらくなるレースにおいて高い操縦性はジョッキーの心理的にも好影響をもたらす。３番ティアーモ、５番セキショウが前に行き、２番シャトーブランシュ、４番コレクターアイテムが後方なら道中は内ぴったりをロスなく回って脚も温存できる。

最終追い切りは時計自体【4F56.3-3F40.3-1F12.3】と平凡だが１週前に速い時計を出しているし、何より手先の軽さに加え、しっかりとした脚取りでまっすぐ登坂している姿から状態の良さが伝わってきた。

祖母リアルナンバー、曾祖母Numerariaは共に亜のマイルＧ１勝ちというアルゼンチンの名牝系。母ウィキウィキは１勝馬だが既走馬相手のデビュー戦で勝つなど高い素質を秘めていたことは初仔のエンドレスノット(４勝)が証明した。Halo[3×5]だから決して大味にならず、内を捌いて来られる機動力は京都内2000mにはもってこい。血統表の奥底では大舞台で覚醒するRibotもクロスしている。南国のハーモニーに乗って、波乱続きの牝馬クラシックを締め括る。

ローズＳ先行勢最先着の○ローブティサージュは時計を出し始めたのがこの組では一番速く、加減されていた春より攻め馬の内容が明らかに充実してきている。理想は内枠だったが岩田騎手なら先行だろうし問題はなさそう。あまりにもベタだがブラックエンブレムの再来も的外れではない。

同じく春とは心身ともに180度違うトーセンソレイユが▲ローズＳは馬場が悪すぎたし、成長分とはいえ余裕残しの仕上げだった。ひと叩きの効果はどの馬より大きいはず。上がり馬シャトーブランシュ、京都３戦３勝で底を見せていないノボリディアーナ、前崩れになればオークス馬メイショウマンボやエバーブロッサムの底力が怖い。