いちょうＳ

２歳リーディングサイアーは４連覇を目指すディープインパクトが【17-13-13-34】で不動の首位。ただ２位ダイワメジャーに１３勝(賞金だと約１億円)をつけた昨年のような独走態勢を阻んでいるのが新種牡馬ヨハネスブルグで【16-10-7-66】その差はわずか１勝で賞金にして２４７万円差は、もはや尻尾を抑えつけている状態だ。

そうは言っても、燦然と輝く実績を残している日本の至宝と未知数の輸入種牡馬では“体力差”が違う。ハナっから設定されたゴールが別物だ。夏の勢いを駆って初秋も活躍したヨハネスブルグに対して、秋が深まるにつれて期待馬が続々と姿を現すのがディープインパクトだ。ディープインパクトにしてみれば、「お遊びはここまで」暮れにかけて鉄壁の牙城作りに入る。ただＧ２勝ち馬を送ったヨハネスブルグの大健闘にも拍手。あとはリーディング２位確保、はたまた来年に向けどのくらい地盤固めが出来るのか。その時はまた賛辞を贈ろう。

前置きが長くなったが問題は新勢力に押されて後退しているキングカメハメハ。産駒がデビューした09年以降、３０[１位]→３２[１位]→１９[８位]→２０[３位]と押し寄せるサンデー系の波に対抗し、確固たる地位を築いてきたが今年は雲行きが怪しい。順位こそ３位を守っているが【11-23-15-71】と２、３着の多さが目立つ。とくに２着２３回は09年終了時点１９回を早くも上回って過去最多。

複勝率は悪くないが勝率9.2％は上位の中では極端に低い。ディープインパクト同様、これから二段構え、三段構えがあると言いたいところだが出走頭数１２０は最多(２位はゼンノロブロイの１０９頭)つまり手持ちのカードを結構切ってこの数字である点に危機感を覚える。

キングカメハメハの最大のメリットは飽和するサンデー系の牝馬を集められることにある。そしてMr. Prospector系らしい万能性を発揮して芝はもちろんダートでも非常に走る。現実に総合リーディングでもディープインパクトに次ぐ盤石の２位だ。ただその状態に胡坐をかいている感は否めない。

ＪＲＡＧ１は１１勝しているがアパパネ、ローズキングダム、ロードカナロアの３頭しかいない。国外や地方を含めればルーラーシップやホッコータルマエも該当するが現状６位でダブルスコアをつけているステイゴールドの６頭で１５勝に比べると質が伴っていないのは明らかである。そこに起こった今年の２歳世代における「求心力の低下」は深刻な黄色信号なのかもしれない。


流れがあっての事だから急激に上向くような特効薬はない。地道に回復を待つしかないが状況を劇的に好転させるにはやはり大きな舞台で活躍する馬が登場すること、そして運気のあるモノに救いを求めてしまうことだ。

いちょうＳに出走するクラリティシチーの母父は目下絶好調のスペシャルウィーク。今年の２歳ブルードメアサイアーとして大ブレイクし、サンデーサイレンスの２位に躍進。これに引っ張られるように一度は完全に衰退した父としても盛り返して(１３位)いるから血の連鎖とは不思議である。

クラリティシチーの母タイキクラリティはオジジアン×MiswakiのパワーがＯＮになった走りでスペシャルウィークの良さが引き出されず芝ではスピードや切れ不足だったが、そこにナスキロ的な柔らかさを持つキングカメハメハを配合したことで、パテントリークリアが元々持っていたRose Bowerのナスキロ活動を呼び起こし、増幅に繋がった結果が評判のディープインパクト産駒２頭を蹴散らした新馬戦だった。

不振のキングカメハメハに再起させてもらった母系、絶好調のスペシャルウィークに立ち直るチャンスを得た父系。お互いの持ち味が共鳴した云わば共同作業みたいなものだがこれをキングカメハメハの手柄とすればいい。もともとＧ１馬タイキフォーチュンや種牡馬Gone Westなど筋の通った牝系だけにクラリティシチーが重賞級に育ってもおかしくない。