萩Ｓ

◆新旧名牝系対決
レーヴドスカーはレーヴディソール(阪神ＪＦ)やアプレザンレーヴ(青葉賞)レーヴダムール(阪神ＪＦ２着)などここまで送り出した５頭すべてがオープン入りしている２１世紀の名繁殖牝馬。その産駒はこの世に生を受けた瞬間からターフでの活躍が義務付けられている血統。

レーヴデトワールの父ゼンノロブロイはナスキロを構える血脈との相性が良くて、Riverman(トレイルブレイザー、ルルーシュ、イチオクノホシ)を持つHighest Honorとの配合は正解。ただし質の揃ったとされる現２歳世代が【12-10-9-88】のリーディング４位と数字があまり伸びないようにこの父系は致命的にワンパンチ足りない。

レーヴデトワールも京都マイルのスローをゴール寸前で差したが正味２ハロンの競馬で上がり34秒1は物足りない。２着馬ダイヤモンドハイが次走であっさり３着を外している点からも牝馬限定の内容としてはかなり平凡だったと言わざるを得ない。もともとズブさがある血統なので距離延長は悪くないが話題先行で過信は禁物。


プリンスダム(父キングカメハメハ)は２０世紀の女傑エアグルーヴの甥にあたり、近親にアドマイヤグルーヴやオレハマッテルゼ、アイムユアーズなどがいて、昨年の有馬記念３着などＧ１戦線を賑わせたルーラーシップとは３/４同血。ルーラーシップはHornbeam≒パロクサイド[6×4・4]でトニービンを振り絞る重厚なナタ斬れをしていた。

マリーシャンタルは父がサンデーサイレンスに替わっているがキングカメハメハと最高のニックス関係であることはローズキングダムやトゥザグローリーなどで証明済み。ただこれにノーザンテーストを加えた配合だとソリタリーキングやアドマイヤロイヤルのように馬力型に傾くのが少し難儀で新馬(新潟芝1800m)を見た限り、跳びの大きなフットワークからパワーで差した感じで芝だと将来的に不安はあるが潰しは利くし、今回のように道悪を走る分には頼もしい。

デリッツァリモーネも同じキングカメハメハ×サンデーの組み合わせで母ドルチェリモーネは忘れな草賞の勝ち馬。母はアウトブリードだが愛Ｇ１(芝7F)を勝っている祖母がナスキロクロス豊富でこの柔らかさが表現されている。しかし母に似てジリジリとしか脚が使えないのが弱点で本質的に外回り向きではない。


◆ハーツクライのLyphard×Hyperion持続力捲り
サトノスーペリアは兄姉にオルトリンデ(芝短めマイラー)サンライズブレット(ダートマイル)サンバジーリオ(芝中距離)がいる屑のでない血統。Seattle Slewの継続クロスなので脆さもあるがそれ以上にスタミナ系ＳＳのパワーで捩じ伏せるようなレース運びがこの一族は目立つ。実はカポーティスターやカレンミロティック、ダイワズームなど母系にSeattle Slew系を構える配合はニックスになる。

母父エリシオはアドマイヤラクティと一緒。メイショウナルトの母父カーネギーもSadler's Wells≒Fairy Kingなので関係性は同じでハーツクライ×Northern Dancer系のニックス。強引に捲ってダートの新馬を勝ち上がったが初めての芝に対応できれば興味深い素材。

「1分33秒2」のレコード決着だったデイリー杯２歳ステークスで前半3F33秒9-4F45秒7の速い流れを作り、直線残り2Fで再度ラップが上がった所ではさすがに余力はなかったが直線も大きくバテずに４着(０秒６差)に粘ったアグネスドリームのスピード能力も捨て難い。

マンハッタンカフェ×Mr. Prospector系の配合はゲシュタルト(京都新聞杯１着)やアントニオバローズ(シンザン記念１着)メイショウドンタク(天皇賞・春３着)メイショウデイム(シルクロードＳ３着)ダイワバーバリアン(デイリー杯２歳ステークス４着)など京都で流れ込むのが非常に上手。本馬の場合、母父がケイムホームなのでやや底力に欠けるが少頭数の１ハロン延長で単騎が叶えば残り目は十分。

フェルメッツァは中和のディープインパクトをつけた事でフラガラッハやイリュミナンスのように偏ったバランスにはなっていないが上がり勝負で不発に終わった野路菊Ｓからすると半姉のようにトニービンのHyperion的な粘りや持久力で押していく競馬が合うのかもしれない。

野路菊Ｓ５着のシャンパーニュはやはり外回りの瞬発力勝負になると劣るチチカステナンゴの典型。ただ新馬のように前受けする形になれば馬力はあるし道悪は有利に働きそう。