アルゼンチン共和国杯

結果論の負け惜しみだがアルテミスＳは馬場を読み間違えた。「ディープインパクトの瞬発力で人気のダイワメジャーを差す」という予想で印を打ったが成績はご存じの通りのマーブルカテドラルが優勝し、ミュゼリトルガールは完敗。前半4F47秒7のスローな流れだから勝ち馬の上がり3F33秒9は分かるが勝ちタイムに「1分35秒2」を要したのは計算外だった。

天皇賞の日はディープインパクト産駒が１勝２着３回３着１回、フジキセキが１勝２着１回３着１回するなど軽いスピードと決め手が生きる馬場だったのが、土曜はディープインパクトの３着１回があるのみ。逆にパワー型ＳＳ系のダイワメジャーが２勝、２着や３着にもブラックタイドやアドマイヤジャパン、スズカマンボが来ていた。

そして何といっても目立ったのはNorthern Dancer系だ。ホワイトマズル、フレンチデピュティ、ローエングリンがそれぞれ１勝を挙げると６Ｒの新馬戦では１４番人気のアサクサデンエン(父はローエングリンと同じシングスピール)が２着に大激走。３Ｒの未勝利ではStorm Catの系統でもあるHarlan's Holidayの産駒がダート替わりで大穴をあけるなど途中少し降雨はあったが良馬場では珍しい反主流血統優勢の傾向を示していた。

アルゼンチン共和国杯や目黒記念がおこなわれる2500mはもともとサンデー系のキレより、Roberto系やGrey Sovereign系のスタミナや持久力が要求される舞台ではあるが今年はその資質が一層高いレベルで試されるはずである。

中心にはアスカクリチャンを推す。父スターリングローズはMr. Prospector系のアフリート産駒でＪＢＣスプリント１着など交流を含めダート重賞６勝。全姉がオークス２着など芝で活躍していたゴールデンジャックだから芝でも走れる血統的な下地はあるが現実的に自身はダート馬だったのだから芝適性を強調するには少し弱い。

ならばダイナレター×マルゼンスキーと繋がってきた母系だろう。ダイナレターもダートＧ３だった時代の札幌記念を勝つなどダートでの良績が多い馬だったが芝でも勝利経験はあるしラストランの中山金杯は59.5キロを背負って４着している。ノーザンテーストやマルゼンスキーが血統表の奥に引っ込んでもいまだ存在感薄れないのは母系からも大きな影響力を残せるからだ。

色々強引に理由付けしてみたが要は高速馬場にも対応しているアスカクリチャンだが、少し時計の掛かる馬場にこういう泥臭い牝系の秘めた潜在的なスタミナが向く可能性が高いという話だ。それは既に札幌記念の２着が雄弁に物語っている。アイルランドＴは59キロで０秒２差４着なら全然悪くない。

夏から使っている疲労やオールカマーから中２週続きでの輸送などそろそろ体調面の不安もあるが中間に５本の時計を出して、追い切りもＣＷで加減なく併せ馬をこなすなどむしろここが目標だったのかと思えるほど充実した調教を消化。デキ落ちは感じられない。他馬との比較で56キロも有利。少し捻ってスタミナ色がより強い母父Northern Dancer系のこの馬から狙ってみたい。

ホッコーブレーヴの父マーベラスサンデーもシルクフェイマスやネヴァブションなどスタミナのある中長距離級を度々送り込んでいる種牡馬。在来牝系にサクラショウリ、地味なＳＳ系の配合は菊花賞や天皇賞(春)で３着したナムラクレセントと同じ。オクトーバーＳは残り100ｍからエンジンが掛かったような伸びで、とにかく長くいい脚が使えるので東京の長丁場はぴったり。大外枠＋三浦騎乗で人気はないが５４キロだしローテ的にも普通なら上位人気のパターンだ。

ムスカテールは目黒記念の豪快な末脚にお世話になった手前、評価を落とすのは迷ったがやはり当時から1.5キロ増のハンデは気にかかる。軽いほうが良いに決まっている。ただ前走時より中間の気配が明らかに変わってきたし、今週も好走時の坂路一杯だったから実力的にも逆転するだけの態勢は整った。

アドマイヤラクティも調教の動きは抜群で叩いた効果歴然。目黒記念の大敗は度外視。メイショウナルトも状態は良い意味で平行線を保っているし、血統的にも向きそうだが実は脚の使い所がかなり難しい馬だと思うので連下まで。ルルーシュはこのコースで実績を残しているが未だに本質的な適性のある舞台だとは考えていない。昨年の当レースと今年の目黒記念はコース追い中心だったが今回は坂路オンリーだし消していいだろう。