東京スポーツ杯２歳Ｓ

新馬戦でゼウスバローズ(２戦目勝利)ベルキャニオン(土曜の未勝利戦に出走)を従えて、ゴールしたラングレーはちょっと性能が違う。1000m通過65秒6のスローを好位のインでがっちり折り合って、上がり3F11.6-11.2-11.5を抜群の瞬発力と反応で素早く抜け出す燃費のいい走り。とにかく全く無駄のない美しい競馬だった。

３代母がMiesque(Kingmamboの母)で流行りのディープインパクト×Storm Cat。この組み合わせはサンデー系×ナスキロ的な柔らかさにWar RelicやWar Admiralなどパワーの血を補強してやることが最大のテーマでラングレーはその点やや希薄なのだがMiesqueのHyperion[5×5]とかGraustark(ハイインロー)の配合を見るとディープの斬れとキンカメ的な持続力を両方手に入れた死角の少ないＡ級馬に育っていくオーラに溢れている。当然来春を意識できる逸材だ。

サトノアラジンはエリザベス女王杯２着ラキシスの全弟。こちらはマジックストームがSecretariat×Fappiano(Mr. Prospector系)のナスキロ継続クロスなので柔らかすぎるくらい柔らかい。キズナのようにジョッキーの合図から加速するまでの動作が非常に機敏で直線の上がり勝負を３馬身半突き抜けた新馬戦(新潟1600m)の瞬発力は圧巻だった。

奥にNijinsky、My Babuとあるので距離は伸びても心配ないがこれもディープ×Storm Catの要であるパワーを伝える血が不足気味で、それでいてラングレーほど綺麗な母系ではないのでラキシスの大健闘がゆくゆくはもどかしさに変ってしまうような印象も受ける。馬格があってストライドも大きいクラシック向きの姿形をしているのだが朝日杯ＦＳでも平気なくらい良すぎる反応云々も含めて見守っていきたい一頭。

デルカイザーはムスカテール(目黒記念)の半弟で、ダイワカーリアン(重賞３勝)や１２年前の勝ち馬アドマイヤビッグの甥にあたる良血でいずれも東京の重賞を制覇しているようにコース巧者の一族。母系の自己主張も控えめでキングカメハメハ×サンデーサイレンスがシンプルに決まっている。ただ３戦連続で出遅れているようにトモが発達途上なので現状は差すなら前走のように上がりが掛かって欲しい。

アンブロジンはGreen Desertやトワイニングと同牝系で世界的名門の出身。日本でもノーリーズン、グレイトジャーニー兄弟やヤマニンパラダイス、その産駒であるヤマニンセラフィムとヤマニンアルシオンも活躍しているがどれも先行や捲りの武骨で渋とい脚質に出ているのが特徴的。

渋った萩Ｓで２着したワンアンドオンリーはこの基礎牝系の上に、いかにもタイキシャトル×DanzigのパワーがONになった配合でこれにハーツクライでHalo[3×4]だから無駄のない脚捌きで中山や阪神の2000mなら結構強調できるが東京だとやはりひと雨欲しい。

イスラボニータは五代アウトなCozzene×Crafty Prospectorの肌にフジキセキをつけてIn Reality[4×5]でWar Relicの継続クロスになり芯が一本通った。３年前に圧勝したサダムパテックのWar Admirai[6×7]以上に強い影響力を残すのは間違いない。いちょうＳは他馬の手応えを確認しながら追い出しを待つ余裕があった割に弾けなかったのがフジキセキっぽいが距離をこなす手堅いマイラーだ。

いちょうＳ３着のクラリティシチーはエンジンの掛かりが遅く緩慢なスペシャルウィーク。休み明けで馬群を縫うようなレースも初めてだったから情状酌量の余地はある。叩いて反応も良化するだろうし、重賞でブレーキを踏まない外差しを見てみたい。

リターンラルクは母方のHyperion気質が邪魔で、ディープの決め手で差すにしても体質の硬さがあるのでストライドが伸び切らない。セントウルＳを連覇した叔父ゴールデンキャストっぽい脚なので急坂のマイルあたりがベストでは。

プレイアンドリアルは母シルクヴィーナスがティンバーカントリー×Danzig×Alydarだから何処を切り取ってもダート馬にしかならない。牝系を遡ればアドマイヤムーンやヒシアマゾン、スリープレスナイトの名前もあるが独自の路線を辿り過ぎた。

コンデュイットはMill Reef＋Rivermanのナスキロ継続クロスでこれが欧州のビッグレースを勝てるShirley HeightsやSadler's Wellsの重厚さを残しつつも高速馬場のBCターフを連覇したり、ジャパンＣを「2分22秒8」で走破できたりする最大の理由。ワールドマッチのような配合だと苦しいが成功する下地はある。