ラピスラズリＳ・(クリスマスローズＳ)

引退レースとなる有馬記念を控えていたエイシンフラッシュは最終追い切り後に右前脚を痛め、無念の回避となった。ラストランの時は訪れず、その最後の雄姿を焼き付ける間もなくターフを去っていく。オルフェーヴル、ゴールドシップの二大主演に次ぐ役者が欠けるのは大変残念だがエイシンフラッシュらしい終わり方に救われる思いもする。

本当に不思議な馬だった。歴代の名馬と比べれば成績は落ちるし、いつも安定した走りをする優等生でもなかった。それでも出馬表にその名があれば話題にせずにはいられない存在感、人々の視線を自然と惹きつける魅力を備えていた。そして時折放つ眩いばかりの強烈な閃光に酔いしれた。押しすぎても、引きすぎてもだめ。競走の裏でそんな駆け引きを密かに楽しんでいたのかもしれない。

ファンの心を掴んだエイシンフラッシュはいつも人気になっていた。それでも一流の路線ばかりを歩んだ約４年５か月、国内のレースで６番人気以下だったことも３回ある。皐月賞、日本ダービー、１１年有馬記念だ。しかし何かの意思が働くかのようにすべて人気に反発し好走した。これが一度は離れかけた心を繋ぎ止め、再び振り向かせるに強力な効果をもたらした。なんて賢い馬なのだろうか。

人気という“好走予告”をしながら「調教詐欺」「馬体詐欺」「手応え詐欺」「展開詐欺」あの手この手で騙され続けた。それでも決して憎まれ役にはならない紳士のような立ち位置は爽やかなヒールの象徴ルパン三世がだぶる。さしずめ毎回喜んで振り回される我々は銭形のとっつぁんというところだろう。

最強世代と呼ばれた日本ダービーの頂点、天覧競馬となった天皇賞(秋)の主役という実力や名誉、立派な肩書がありながらいつまでも三枚目が似合う馬。それがまた絵になる馬だった。最後に出走回避という禁じ手を打ったエイシンフラッシュだがオーナーや調教師の粋な計らいで一旦は中止となった中山競馬場での引退式が実施されることになった。ファンに愛され、そしてファンを愛した漆黒の馬体は別れの時も誇らしげにするのだろう。

-ラピスラズリＳ-
開幕週の市川Ｓ(1600万)が[33.3-35.3]＝「1分08秒6」だから冬季の中山開催らしく時計が掛かる状態。それに加えて週中の雨で多量の水分を含んでいるだろうから馬場発表以上にパワーを要すると考えたい。◎はモグモグパクパク。昨年同時期の黒松賞→クリスマスローズＳを連勝しているように馬場適性は高い。

春にファルコンＳ４着(０秒２差)ＮＺＴ６着(０秒５差)の成績があり、初の古馬相手だった朱鷺Ｓでも３着(０秒１差)と距離次第では重賞でもやれそうな雰囲気を秘めていただけに秋以降は不満な内容だったが前走の尾張Ｓは互角のスタートから前目のポジションに付け、直線抜け出しを図って２着。ストレイトガールには完敗したが３着以下はしっかり封じていた。

体が減り気味だった夏場より随分馬体の厚みも増してきたしさすがに成長期にある３歳馬で５４キロも絶対的に有利。芝ダ兼用のメイショウボーラー×フレンチデピュティの配合だから芝なら当然馬力が要求される方が合っている。得意のコースで１年ぶりの御馳走にありつくチャンス到来だ。

他場だと別馬だが中山1200mは【1-3-2-1】と相性抜群のキングレオポルド(父フジキセキ)が○堀厩舎はＲ．ムーア中心の出馬で勝負を懸けている。京阪杯大敗で人気落ち必至の▲サイレントソニックは内枠の北村宏司で巻き返したい。京洛Ｓを「1分07秒0」で勝っている△ハノハノも元来時計の掛かるレース向きだけに前走は度外視したい。

クリスマスローズＳはヨハネスブルグ、ブラックタイド、アドマイヤマックスが各２頭で王道ＳＳ系がネオユニヴァース１頭だけ。条件的に驚くことではないが波乱の匂いは十分すぎるくらい漂っている。◎フリュクティドールに福島２歳ステークスの貸しを返上して頂こう。その２走前は渋滞にハマって動くに動けずの１４着。新馬戦の完勝が飾りでないことは黒松賞３着で証明している。多少妙味はなくなったが素直にこの馬から勝負する手。

相手は手広くいきたいがまずは中山1200m「1分10秒2」のグランツ(父コマンズ)「1分10秒8」のヴァンデミエール(父アサクサデンエン)芝未勝利もパワー血統で向きそうなキタサンシンゲキ(父のボジャック)