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2013/12/21 15:00
ラジオNIKKEI杯2歳S
まさか歴史あるラジオNIKKEI杯が番組改編の煽りを食うとは夢にも思わなかった。いやかねてから噂されていたようにG1に昇格させるような前向きな変更は頭にあったが2歳重賞が乱立する何の脈絡もない11月の最終週にもってくるとはあまりにぞんざいな扱いである。軽視されがちな皐月賞の格を見直すためとも言えるが2歳における一番をマイルの朝日杯FSに置いた結果のことだからこの改編は結局大きな矛盾を残す。
このレースを勝って日本ダービーも制したのはタヤスツヨシ、アドマイヤベガ、ロジユニヴァースの3頭だがクラシックとなればアグネスタキオンを筆頭にナリタタイシン、ザッツザプレンティ、ヴィクトワールピサ、エピファネイアの名前が挙がるし、負けてはいるが00年クロフネ、ジャングルポケット、05年アドマイヤムーン、11年ゴールドシップ、12年キズナなど数々の名馬たちが物語の最初に刻んでいった神聖なページの舞台であった。
有馬記念の前日に未来のスターを探し、出会う。競馬は点と点を結んでいるわけではない。どんな試練や困難があって複雑怪奇であろうとその道は常に頂点を目指して一本でなくてはならない。そういう意味の高揚感までもが失われてしまうのは本当に寂しい。ただクラシックを歩む馬たちにとってはこのレースが開戦の合図。将来性豊かな馬たちに1頭でも多く巡り会いたいものだ。
人気はサトノアラジンとモンドシャルナ。サトノアラジンは東京スポーツ杯2歳Sで1番人気5着。道中でキャリアの浅さを露呈し、内目を通った馬が上位を占める中で直線も外を回ったわけだから負けるべくして負けた。敗戦のかたち自体は悪くないがあの気性や大きなストライドは断じて阪神内回りの2000m向きではない。それでも勝ってしまうような馬がクラシックを制してゆくのだろうが昨年3着のキズナに近いタイプなので圏外は想定しておきたい。
一方ディープインパクトの半弟モンドシャルナは父が捲り上手なネオユニヴァース(08&09年に産駒が連覇)全姉トーセンソレイユの時にもふれたがこの血統はディープインパクトが超別次元だっただけで母ウインドインハーヘアはFair Trial×Hyperionの影響力が強いハイインローの型だから渋とさや粘り強さを基調とした配合。
ネオユニヴァースも母系は重い欧州系だから瞬発力は望みにくいが時計が掛かる内回りコースでは抜群の適性を示すはずで当然今回は有力。ディープインパクトを投影せずダービーではなく素直に皐月賞で評価したい。ただモンドシャルナも重馬場の新馬戦を勝っただけでしかもヴィクトワールピサやロジユニヴァースのようにHaloのクロスがないので速く機敏に動ける保証はないので軸を任せられるほど信頼度は高くない。
紡がれてきたメジロの底力が少しタフなコンディションで蘇るとみてビップレボルシオンを本命に推す。母メジロジョーンズは芝ダの中距離で3勝した並の条件馬だったが全姉メジロドーベル(父メジロライアン)はG1タイトルを5つ獲得した名牝。近親には鳴尾記念を勝ったメジロマントル、叔父に長距離を中心に活躍したメジロコルセアがいる。血統的繋がりはないがメジロドーベルと同世代同父のメジロブライトは96年ラジオたんぱ杯時代の勝ち馬である。
レコードが記録された東京スポーツ杯2歳Sの翌日に同舞台でデビューしたがその印象が大きく霞むことはなかった。スタートで若干体勢を崩したため無理せず後方からの追走。前半5F61秒6のわりに馬群は縦長だったが4角手前から気合いをつけられると大外を通って鋭伸。残り200mで逃げたデンセツを捕らえると脚勢衰えることなく余力たっぷりに3馬身差のフィニッシュ。展開的不利を意に介さず、直線でレースに集中していない一面を覗かせながらあの完勝だから潜在能力は相当だ。
東スポ杯の「1分45秒9」が出色なだけでビップレボルシオンの「1分48秒7」は悪くない。むしろ1000m通過の2秒差がそのまま勝ち時計に直結しただけで上がり3Fは東スポ杯[11.6-11.2-11.6]新馬[11.6-11.2-11.8]で大差はないことからも同等に近い評価を与えてもいいはずである。
今週の栗東の坂路は古馬でも足をとられて時計の出方が鈍い馬も多かったが強めに追われた程度で【4F52.4-3F38.1-1F12.6】は素晴らしい。内面に子供っぽさはあるが想像以上に体幹はしっかりしている。これなら荒れ馬場も問題なさそう。
押し寄せる変革の波に飲まれたメジロ牧場。同じく暮れからの移動を余儀なくされたラジオNIKKEI杯。この2つがどこか重なって見えるのは気のせいか。お互いの意地が共鳴した結果、来年のクラシックVともなればこれほど痛快な逆転劇はない。