有馬記念

クリスマスムードにも突入していないせいのか、まったく暮れや年の瀬という雰囲気ではない。有馬記念の盛況云々とはほとんど関連性はないはずだがどうも気分が高まり切らない。それも理由のひとつだが具体的にはきょうで競馬納めにならないこと、そしてジャパンカップと同じようにメンバーが揃わなかったことだ。

ここは有馬記念の検討をする場だから後者を取り上げる。およそ３か月前までは有馬記念は超豪華な顔ぶれになると予想されていた。こういう妄想にも近い予想は今回に限ったことではないが個人的にもこれは実現性がありそうと感じていた。しかし得てして叶わない。妄想は妄想のままで終わる。

オルフェーヴルは凱旋門賞を勝てなかった。キズナも凱旋門賞で健闘したが結局出走を取りやめて国内の秋は全休。ゴールドシップは崩壊。ジェンティルドンナはグランプリに見向きもせず逃走(あえて言う)エイシンフラッシュは最後にして究極のお勤め。秋３戦消化したメイショウマンボは仕方ないとしても一度は色気を出したトーセンラーやエピファネイア、ジャスタウェイはなんとかならなかったのか。フェノーメノも無理は禁物だが調整次第では有馬記念も視野に入ったのではないか。

ファン投票ベスト１０に選出されたうち、出走するのは１位オルフェーヴル、３位ゴールドシップの２頭。２０位まで広げてもナカヤマナイト(１１位)トーセンジョーダン(１３位)ウインバリアシオン(１４位)ルルーシュ(１８位)の４頭。合わせてもフルゲートの半数にも達していないのだ。過保護が目に余るのは気のせいだろうか。

何にせよホストとしての役目を果たしたオルフェーヴルは讃えよう。この馬がいなかったらと思うとゾッとする。ただし最強馬の燃えさかる魂は遠く離れたフランスの地。昨年の凱旋門賞を落として以来、すべてはリベンジのために敷かれたレールが今年の完敗だった２着で外れた。数々の名馬が儚く散った５歳の有馬記念である。


難しく考える必要はない。有馬記念の穴はベタでいい。奇を衒う手間はいらない。「中山巧者」「宝塚記念好走」「内枠」特殊なコース形態ゆえに実力が反映されにくい紛れをついて渾身の◎ダノンバラードが総決算を締め括る。

中山の神マツリダゴッホのインパクトが強すぎるが目には目を、歯には歯をではないが癖コースには曲者をだ。タップダンスシチーやリンカーン、ダイワメジャー、エアシェイディが複数回上位に絡んでいるのは実力以上に中山の攻略法を掌握し、知り尽くしていたからに他ならない。00年絶対的二強の影で１３番人気３着したダイワテキサスは中山重賞３勝、翌年マンハッタンカフェと万馬券を演出したアメリカンボスはその年のＡＪＣＣ杯→中山記念を連勝していた。中山適性は最も重要な好走条件と言える。

宝塚記念と繋がりも見逃せない。同格のＧ１であるという点が一番大きいが阪神内回り2200mは中山2500mに近いコース。そこに必然性が生じるのも当然の帰結だ。ステイゴールド、タップダンスシチー、シルクフェイマス、ポップロック、古くはメジロパーマーなど穴っぽいところだけ見てもこれだけいる。

内枠に関しても３番枠から一ミリの狂いもなく乗ったマツリダゴッホのイメージが強い。実際過去10年１?４枠４勝、５?８枠６勝で勝ち馬単位だと外枠優勢。ただ着度数ベースだと１?４枠【4-8-6-67】５?８枠【6-2-4-79】になる。１?４枠の平均複勝回収率が88.7％あるのに対して５?８枠は75.2％。大差ないと思われるかもしれないがこれは明らかに08年１４番人気で2280円をつけたアドマイヤモナーク(８枠１４番)の影響だ。過去の好走例をみても内枠有利の理論は成り立つ。

この条件をすべて満たしているダノンバラードは自信を持って買える。ごり推しでいい。印象は良くないがＡＪＣＣを３番枠で勝っているし、オールカマーも僅差の３着。上がり3FのＭＡＸ値が34秒5と斬れ味や瞬発力を問われると厳しい反面、時計の掛かる馬場に滅法強い。その特性を発揮できるのが中山や阪神の内回り。ジェンティルドンナ、フェノーメノに先着した宝塚記念２着はその最たるもの。初重賞勝ちのラジオＮＩＫＫＥＩ杯も阪神の内回り。従来のディープインパクト産駒像は捨てていい。

そしてその高いコース適性を生かすべく引いた１枠１番で数え役満。おそらく向正面まではスロー、そして残り4ハロン、いやもっと段階からスパート合戦になる。これに加わるとまず勝ち目はない。だからこそじっと戦況を見つつ脚の使い所を探れる内枠は幸運の枠となる。そして絶好調とまで言えないがピークに近い状態に仕上がった。

たとえこの馬が先頭でゴールしてもそれは波乱でもなんでもない。