大和Ｓ

国内Ｇ１(３勝)香港スプリント連覇の偉業を成し遂げたロードカナロアが文句なしで年度代表馬の座に輝いた。４歳の春まではどことなく非力な印象で成績も一歩足りなかったが夏を挟んで急激に逞しくなり、タイトルを重ねる度に風格が増していった。有終の美を飾った香港スプリントの圧勝劇はまさに集大成に相応しかった。

香港のスプリント界は長きに渡って、遠征しては散りを繰り返していた日本馬の障壁たる未開拓の地。日本馬が爪痕すら残せなかったジャンルに難なく名を刻んでくるのだからもう誰の手も届かない境地に達していたのだろう。そして国内のレースでは安田記念の強さに驚かされた。1200mで差している馬だったから生粋の短距離ランナーだとは思っていなかったがいきなりＧ１で、しかも初の東京コースだったから余計に衝撃的だった。

近年の慢性的な層の薄さや衰退からすれば軽視されがちな短距離馬の受賞はとてつもなく大きな功績と言える。同じように世界を制し、無敵を誇った９８年のタイキシャトル以来、実に１５年ぶりのことである。年度代表馬とはあくまで競走生活だけを切り取った“表の顔”だが生産界などに新たな流れを呼び込む契機を作ったとすればロードカナロアの果たした役割は年度代表馬の評価以上にずっと大きいのかもしれない。


1400mでは堅実なマルカフリート、昨年の根岸Ｓ１着メイショウマシュウ、２着ガンジス。それに前走は放馬で競走除外もエルムＳ１着のフリートストリートなどフェブラリーＳを睨む馬も参戦しており面白い組み合せとなった。ただメイショウマシュウやガンジスは近況ひと息、フリートストリートもアクシデントの影響はないのだろうが万全とは思えない。マルカフリートも58キロでは[1-3-0-1]と斤量が堪えている感じがある。

ここは前走の大敗で人気を落としそうなキズマの巻き返しに◎だ。その京都オータムリーフプレミアム(１２着)は最内のスリーボストンがハナを切って一旦は２番手も外から被され気味になったところで慌てて押して前へ。さらに道中で先頭に立つなど見た目以上にリズムを崩し、直線で並ばれると抵抗なく交されるまさに典型的な逃げ馬の脆さを露呈した内容だった。

ただラップ的にも前半3F34秒8[12.2-11.0-11.6]は流れが落ち着きやすい京都1400mとしては速く、息を入れられる場面もなかった。ちなみにマルカフリートが好位から抜け出した昨年の大和Ｓは前半3F36秒1[12.4-11.3-12.4]のかなり緩い流れだった。あまり遅くても決め手のある馬にやられるが逃げの名人藤田伸二なら百も承知だろう。単騎で行ければペルセウスＳ２着[前3F35.2-後3F35.1]や大阪スポーツ杯[前3F35.2-後3F36.1]完勝のように終いの粘りも全く違ってくる。

父がStorm Cat系のDiscreet Catなので連チャン期が終わっていると危険だが種牡馬トワイニングやBertolini、日本ではヤマニンパラダイスやノーリーズンと同じファミリーの出身でNijinskyの４×３やNothern Dancer５×５×４を内包するなど字面以上に芯はしっかりしている血統構成。得意距離と絶好の１枠１番で逃走の準備は万端だ。

○マルカフリートは転厩緒戦、追い不足の状態でもギャラクシーＳ２着。最後はウォータールルドとの叩き合いで半馬身譲ったが斤量や順調度を考えればオープン特別での主力は堅い。

▲フリートストリートは古馬になって再び上昇気流に乗って夏には重賞初制覇するなど地力強化が目覚ましい。1400mは箕面特別以来２度目。当時はキズマに完敗しているが初距離、休み明け、出遅れと厳しい条件だっただけに参考外。重馬場のエルムＳで「1分42秒0」を記録しているように本質的には軽いマイラーだから1400mにも対応できる。

オープンでは不振だが短距離に矛先を向けたジョヴァンニが穴。不良のオークランドＲＴＣでは逃げてマーチＳ３着の実績を持つフレイムオブピースに４馬身差につける楽勝。同条件でローマンレジェンドが叩き出した「1分48秒5」には及ばないが阪神でこの時計は相当優秀だ。素質は高いだけに路線変更に注目したい。