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2014/01/13 12:00
淀短距離S
デビューから僅か3か月でオープン入りを果たした快速娘レディオブオペラの名前と戦績を眺めているとある馬の物語を思い出す。
「ひと夏のヒロイン」まさにワンクールのドラマだった。レディブロンドと名付けられたルックス抜群の牝馬が金色のたてがみをなびかせて姿を現したのは2003年の6月。5歳の夏のことだった。出走したのは1000万条件のTVh杯(芝1200m)単勝5番人気。直線一気。異例尽くしのデビュー戦だった。
その才能と人気が確かなものと証明されるのに多くの時間は必要としなかった。等間隔かつ人々の興味を惹きながらリアルタイムで進行されるひとつのストーリー。気付けばレディブロンドは2か月の間に4勝。誰よりも輝いた夏の終わりに新たなステージでの飛躍を誓い、育ての地に別れを告げた。
秋の空気も漂い始めた頃になっても快進撃は続いた。セプテンバーSを完勝すると連闘でついに最高峰の舞台に立った。デビューから107日目のことだった。結果は4着と初めて土がつく形となったが歴戦の名優に囲まれながら名実ともに一流への階段を駆け足で登っていった。
しかし以降、彼女が表舞台に戻ってくることはなかった。真夏に打ち上がった煌びやかな花火が辿る運命。母の急逝による突然の繁殖入り。レディブロンドの物語は自慢のスピードと共に3か月で終演した。この年に生を受けた偉大な弟の蹄跡とは違った頬をなでる爽やかな風ようなドラマを我々の心に残してくれた。ディープインパクトは「“あの”レディブロンドの弟なんだ」と何十年経っても語り継がれてほしい。
レディオブオペラはその生まれ変わりなのかもしれない。未完に終わった物語を紡ぎ、夢の続きを見せてくれるのではないか。8月18日に迎えたデビュー戦こそ3着(0秒1差)だったが次走で不良馬場を力強く逃げ切って9馬身差の大楽勝を飾ると、500万2着を挟んで京都1200mを3連勝。レディブロンドを彷彿とさせる電撃出世だ。
これで1200mでは[4-0-1-0]傷のない戦績以上に内容もしっかりしている。初めてレースを見たのは1000万の時だったが道中スッと2番手に収まると4角では馬也で後続を引き離しほぼ追う場面もない綺麗な勝ち方に唸らさられ、雨で湿った馬場にも関らず前日の京洛Sと0秒3差の勝ちタイム「1分07秒3」にすぐさま重賞レベルを確信したのは偽らざるところだ。
醍醐Sも内の逃げ馬を行かせて控える余裕を見せ、直線半ばで先頭に立っても脚勢は衰えず快勝。最終週でさすがに時計は「1分07秒9」に留まったが京阪杯の「1分07秒5」にも決して見劣りしない。若い頃のロードカナロアはスローの上がり勝負ばかりでスプリンターとしての資質を見抜きにくかったがレディオブオペラは前傾ラップの経験も十分あるから昇級即通用の根拠がはっきりしている。
ドバイワールドカップ、ジャパンCなど王道の中距離での活躍が知られるシングスピールだが自身が母系に軽いHaloの血を持つことでローエングリン(孫のロゴタイプ)アサクサデンエン、ライブコンサートなど賞金上位はむしろマイルあたりを主戦場とする産駒が目立つ。
レディミドルトン≪Kingmambo×サンデーサイレンス×Danzig≫との配合でHalo3×4、Special5×5のニアリークロスを発生させたのはシングスピールの持ち味を見事に生かしたもので理に適っている。祖母Danutaは名スプリンターのビリーヴと似た感じの血統構成だけに1200mでの頂点は必然。レディオブオペラ劇場の第二幕の開演だ。