すみれＳ

◆キングカメハメハのナスキロ増幅
サンデーサイレンスという強力な相方がいる割にはキングカメハメハの芝成績は冴えないがローズキングダムやトゥザグローリー級であればいつ誕生させても不思議はない。まさかスズカデヴィアスがその領域に達する馬だとは思わないがオープン特別であれば十分に推せる。

キンカメは自身の持つナスキロ(Mill Reef)を刺激してやると不足している速力や瞬発力を補うことができる。ローズキングダムはMill Reef[5×4]でロードカナロアだとMill Reef≒Secretariat[5×4]いずれも理想的なナスキロ増幅の形だ。他にもアパパネなど東京、京都(外)阪神(外)のＧ１で３着以内に入っている馬はルーラーシップを除いて母系にナスキロ血脈を構えていた。

スズカデヴィアスだとMill Reef≒Seattle Slew[5×3]でナスキロ継続クロス。この配合に母系の奥に入るWar AdmiralやらRibotやらが絡むと案外バランスに優れたタイプと見受けられる。持続力やスタミナが要求されやすい阪神(内)でナスキロの話をしても仕方ないのだがスズカフェニックスやシンコウキングの近親という点においても注目する価値はある。

◆父の軽さ×母系の重さ
現役時代に９８年エリザベス女王杯２着をはじめ中距離重賞２勝と活躍したランフォザドリームは初仔のフィーユドゥレーヴがいきなり函館２歳Ｓを制覇、５番仔オウケンサクラが桜花賞２着するなど高い能力を伝えている反面で４頭が未勝利に終わっている。つまり完全なホームランバッター。

この観点からすれば新馬→梅花賞を連勝したヤマノウィザードは“アタリ”。ただし問題はこの後。土曜のアーリントンＣも含めディープインパクト産駒はのべ３４頭で重賞を５３勝しているが母父Roberto系との組み合わせが一頭もいないのだ。ニューダイナスティ(５勝)が上限でしかも重賞に手の届く雰囲気ではない。

ヤマノウィザードの母父はRoberto×In Realityのリアルシャダイだからいかにもバテないステイヤーの匂いがする。デビューから２戦とも直線だけで差し切っているが新馬の全体上がりは「35秒4」梅花賞にしても33秒8で上がっているが全体は「35秒1」に過ぎない。斬れる脚があると判断するのは早計だ。Robertoらしく捲って夢の延命を図るか。ディープの決め手を信じ貫くか。いずれにせよダービーの器ではない。

◆交差するジレンマ
ワールドインパクトの母ペンカナプリンセスは英Ｇ３・フレッドダーリンＳ(芝７Ｆ)の勝ち馬。母父Pivotal(英Ｇ１・ナンソープＳ、英Ｇ２・キングズスタンドＳ)も1000m重賞で強かったから距離が持つNureyev系としては珍しい生粋の短距離血統。

全兄ダノンジェラートはセントライト記念３着こそあるが全４勝は2000m以下、全姉ロジプリンセスも唯一の勝利は1800mだ。Lyphard[4×5]だから脚質的にやることも決まっている。展開利を見込んで新馬や未勝利時のように前で流れに乗せてしまえば相手関係が手薄な今回は勝ち負けになるがそれは誤った進路へ通じてしまうかもしれない。

昨年も解説したように阪神内回りはスピード不足でダート寄りの適性がある馬の台頭も目立つ。今年はコウエイワンマンが穴。すみれＳ過去５年で２勝のジャングルポケット産駒で母父が地方の雄アジュディケーティングと血統適性は抜群。そもそも陣営がマイルに使っている意図こそ不明で距離延長は大幅な条件好転。

レーヴデトワールはゼンノロブロイの配合として方向性は正しいが父の弱点で底力やパンチ力に欠ける。掛かり気味の前向きすぎる気性に加えて、揉まれ弱い面もあるなど兄姉に比べ隙が多すぎて混合の2200mで買う気は微塵も起きない。

エイシンハドソンの父マンハッタンカフェは当該コースで高い回収率を残している。ただ出世頭の全兄エーシンモアオバー(１０勝)を筆頭にオレゴンガールの仔は６頭いるが芝は未勝利なのでさすがに強調しづらい。