723件のひとこと日記があります。
2014/03/08 00:00
チューリップ賞
競馬サークル内における一期一会の出会いこそが今日に至るまでの発展を支えているといって過言ではない。どんな名馬も血統表に登場する、どの名前が欠けても誕生することはない。ただもちろんひとつ、ひとつの功績や貢献度に優劣はある。一代で繁栄を築くことも可能な種牡馬の力は大きい。そして紡がれてきた歴史の重みを噛みしめられるのが牝系の醍醐味である。
生まれつき左前脚が極端に内曲し、体質が弱かったとされる一頭の牝馬と向き合ったことが後に多大な利益や影響をもたらし、それによって現在の立場があるとすればピンチをチャンスとした好例となろう。競走馬になることすら危ぶまれたその牝馬こそ日本競馬の至宝ベガである。
桜花賞、オークスの二冠に輝き、一躍ヒロインの座を射止めた彼女は繁殖としても日本ダービー優勝馬アドマイヤベガ、芝ダ問わずG1を7勝したアドマイヤドンを送り出している。この予想を越えた母としての活躍が当時完成して間もなかったノーザンファームの礎を作ったのは間違いない。
そのベガがただ一頭だけ残した牝馬ヒストリックスター(父ファルブラヴ)の産駒。つまりベガ直系の孫にあたるハープスターが偉大な背中を追ってターフに帰ってくる。新潟2歳ステークスでの衝撃的な殿一気を振り返っても類稀な潜在能力を受け継いでいるのは確実。ただ人馬ともにその圧倒的な力を扱いきれていない。
阪神JFは戦前から調整遅れが懸念されていた中で後方から馬群を縫うように捌いてきたがレッドリヴェールにハナ差及ばずの2着。確かに迷わず外を捨て、内に切り替えたからこそあった2着だったとも言えるがレース後に調教師から消化不良を仄めかすニュアンスの談話が飛び出した通り、ハープスターの競馬を引き出せなかったのも事実。
新潟2歳ステークスが豪快に大外を回してエンジン全開だったように、周りに馬を置かない方がいいタイプ。厩舎の先輩にあたるブエナビスタもそうだったように小細工しない方が好結果に繋がる。持ち味はもとより、何より選ばれた馬のみぞ与えられるスター性まで摘んでしまったのが不満だったはず。それは松田博資調教師がハープスターに全幅の信頼を寄せる証拠だ。
そしてあの敗戦がもたらす唯一にして最大の収穫が“無敗”からの解放。取り返しのつかないクラシック本番を前に負けパターンを知っておくことは非常に重要でもある。ウオッカ、ダイワスカーレット、ブエナビスタ、ジェンティルドンナら古馬の王道G1を勝利するほどの名牝たちもクラシック前に必ず敗戦を経験している。昨年のダービー馬キズナも結果的に連敗したことで進むべき道が明確に示された。
好発進を決めたい3か月ぶりの始動戦だがこの中間は2週連続併せ馬で遅れるなどピリッとしない。映像を確認しても時計ほどスピード感はないし、見栄えも良くはない。ただこの春の主役にもう負けは許されない。川田将雅も決心は固まっているはず。寒さ居座る3月の仁川から名血の復刻と暖かい春への吉報が届く。
残り2枚の切符を争う次点以下は大混戦だがまず取り上げたいのがレッドオーラム(父ダイワメジャー)エルフィンS5着は考えられる最悪のケースになったが未勝利戦の勝ちっぷりや血統の質は権利獲得に相応しい。先行力に自信を持つフェアリーS3着のリラヴァティ(父ゼンノロブロイ)京都マイルの未勝利「1分33秒9」があるウインリバティ(父ダンスインザダーク)が特注。