毎日杯

◆ダービー射抜く必中の裏登竜門
毎日杯は過去10年でキングカメハメハ(04年)ディープスカイ(08年)キズナ(13年)の３頭が日本ダービーへの通過点として駆け抜けている。いずれも１冠目はパス。皐月賞の最終便と呼ばれていた時期から日本ダービー制覇に照準を絞った最良の黄金ローテとして独自の変革を遂げつつある。

フェノーメノ、キズナ、そしてラングレー。よほど皐月賞に縁がないのか。また世代随一の期待馬がその数奇な運命を辿ろうとしている。身体能力は当然、それに加えてこの先は精神的な強さが重要になってくる。見た目は遠回りでもこの修行がひとまわり以上逞しく深みを増した姿に成長させてくれるはずだ。

注目必至のラングレーはディープインパクト×Storm Catでキズナ、アユサン、ヒラボクディープなど昨年のクラシックシーンを席巻した名ニックス。この配合は瞬発力やキレなど主に軽さを伝えるディープを母系からWar RelicやWar Admiralなどパワーの血を補うことで大幅な能力の底上げに成功している。

ラングレーにはWar RelicもWar Admiralも入っていないがそれに匹敵する可能性を秘めるのがＢＣマイル連覇、ジャック・ル・マロワ賞連覇、ムーラン・ド・ロンシャンなど８０年代後半の最強マイラーとして君臨した母母母にあたるMiesque。この血はやがて大種牡馬Kingmamboを通じて世界に再発信されている。

Miesqueの核はSpecial(Nureyevの母)とFlower Bowl(Graustarkの母)でKingmamboとサドラーズウェルズは有名なニックスだからKingmamboの全妹Monevassiaとサドラーズウェルズの母Fairy Bridgeと姉弟の関係にあるNureyevを脈絡させるのが最大のポイントになる。

東京で新馬、ゆりかもめ賞の２勝を挙げているように阪神外回りならナスキロ的な柔らかさは文句なしに発揮できるだろう。キャリア２戦目の東スポ杯で４着。先着を許したイスラボニータ、プレイアンドリアル、クラリティシチーは世代屈指の実力馬たち。伝説の東スポ杯組の主力として名を轟かす素質は無限大。激戦に耐えうるだけのキーをMiesqueは握っている。

◆阪神でナタの斬れ味炸裂
ステファノスは祖母にＧ１南部杯優勝やフェブラリーＳ２着の実績を持つゴールドティアラをもつ血統でクロフネ産駒のココシュニックは当然の如くダート中距離で３勝。Seeking the GoldはMr. Prospector×Buckpasser、チーフズクラウンはDanzig×Secretariatなので母系は代々パワー型の遺伝。

似た配合でディープインパクト×フレンチデピュティ(クロフネの父)のカミノタサハラ、マウントシャスタ兄弟やウリウリが出ているように相性自体は悪くない。余計なクロスのない五代アウトなのでラングレーと同様に父の良さを消さずにパワーの血を上手に抽出すれば外回りでも阪神なら重厚なナタ斬れとして活きる。つばき賞は断然の決め手だったし重賞級の素材だ。

◆バランスが浮沈を左右
INVINCIBLE SPIRITは日本からエアトゥーレが参戦した年の英Ｇ１・スプリントＣの勝ち馬でDanzig系らしい突進タイプ。シンガンは母父がセントジェームズパレスＳ勝ちのGrand LodgeだからDanzig[3×4]母がBold Ruler[5×6]でもあるし短距離をパワーでごり押す血統。ただナスキロが二本あって芝にも対応しているように鋭さはないが渋とさは感じる。大負けしたら敗因は距離。

今年大当たりのフジキセキを父に持つアドマイヤヤングは母父Swain(キングジョージ連覇、愛チャンピオンＳ)母母母父Allegedで欧州のスタミナで固められた牝系。叔父のダイワワイルドボアもアグネスタキオンにしては距離が延びてよかったし、フジキセキの素軽さが緩衝材の働きをするかもしれない。デビュー２戦目と条件は厳しいが調教の動きとセットで一考したい。

ラジオNIKKEI杯２着のアズマシャトルはBuckpasser[5×4]でゼンノロブロイの薄さをカバーしているが母ブレッシングのナスキロをBull Lea[5×5]で潰してRoberto的な捲りの馬になったかなという印象。相手関係は多少楽になるが外回りで詰めきれるとは思えない。

エイシンブルズアイはGone Westを経由するミスプロ系の父Belgraviaが内包するBold Ruler的な体質の影響で柔らかすぎるので白梅賞のように内回りのスローでチョイ伸びは得意だが芯が通っていないから直線の長いコースだと実直に末脚を伸ばせない。1800m向きでもないし前目で運んでどの程度粘れるかという競馬。