忘れな草賞

◆逆襲の一手
ミューラルクラウンの母クラウンプリンセス(父スペシャルウィーク)は２歳戦から活躍した馬だったが５歳時にマイルのオープン特別を２勝し小倉記念でもハナ＋クビ差の３着の実績があるなど息の長い競走生活を送った。斬れる脚こそなかったが先行して渋とく接戦向きの勝負根性を備えていた。

早い時期から相当な能力の持ち主と期待されるも気性的な扱いづらさに故障も重なって尻すぼみに終わったのが２つ下の全弟リーチザクラウン。姉よりも母系のSeattle Slew×Mr. Prospector×Secretariatのパワーが強力な走りだったのは超不良馬場だった日本ダービー２着からも明白だ。

同時にアメリカンな単調さが前面に出ていたのも特徴的でマイペースに持ち込むと強かった(きさらぎ賞やマイラーズＣ)が絡まれたり、揉まれる展開になるなどリズムを崩される(皐月賞・安田記念)と途端に脆くなるのが出世を阻んだ原因でもあった。

スペシャルウィークはブエナビスタやシーザリオ、インティライミのように血統的な非力さを補完できるNorthern Dancer系を母方に構えるのがベターな手段なので褒められる配合ではなかった。ただミューラルクラウンは父がＳＳ系と非常に相性の良いホワイトマズルでマイラー家系×Lyphard系の組み合わせはトライアンフマーチ(母キョウエイマーチ)に酷似している。

本馬は五代アウトだが祖母クラウンピースがナスキロ血脈を二本内包しているので芝向きの柔らかい体質は受け継いでいるし、Bold Ruler[4×4]で機動力や器用さもある。ホワイトマズルの頑強さで一本芯が通れば化ける魅力を秘めている。勝ち上がりに時間は要したが慌てる血統ではないし、距離延長でジリ脚合戦突入なら真価を発揮する。

◆母の幻影ちらつく仁川経由東京ゆき
阪神内回り2000mでディープインパクト、ステイゴールドに次いで優秀なのがシンボリクリスエスで[10-7-10-44]複勝率38.0％、複勝回収率108％の高い数字をマークしている。芝ではスピード不足のレッテルを貼られがちなRoberto系のパワー捲りが炸裂する格好の舞台と言える。

ヤマニンアリエッタの母ヤマニンファビュルは名マイラーだったエアジハードの速力因子を存分に受け継いでいて、場内を湧かせたオークスでの大逃げが記憶に残る。春に一変したきっかけがシンガリ人気で３着に粘った忘れな草賞だったし娘がこの舞台でひと仕事する必然性に溢れている。

母系がサドラーズウェルズ×Blushing Groomなのでスタミナは豊富だが母ヤマニンファビュルよろしく叔父のヤマニンウイスカー、ヤマニンファラオ、従兄弟のヤマニンエルブなどやたら気っ風いい逃げを打ちたい気性の一族だけにちょっとトロさもある位が丁度いいかもしれない。若さは残るが内回り替わりで前進なる。

◆ダラリ型マンハッタンカフェ
君子蘭賞ではヤマニンアリエッタに先着しているアイスブレイクも決め手の欠如を先行力でカバーしている馬でコース替わりは大歓迎。血統的には叔父に英G３ソヴリンＳ(芝8F)勝ちのPride of Nationがいる程度でこの父は母系の持ち味を引き出しやすいのだが至ってシンプルな構成で特色がない。これが地味な脚質、平凡な戦績に反映されているので頭では狙いにくい。

鞍上の中距離進言がようやく叶った形のレッドオーラム(半兄タッチミーノット)は何度も推奨してきたように「サンデー×Mr. Prospector×Buckpasser」の成功配合。言い訳のできない舞台と相手関係だけに最後の審判。

サクラバクシンオーは通算689勝を挙げている名種牡馬だが2000m以上では[4-1-4-110]と壊滅的。エルコンドルパサー×ダンシングキイの牝系出身のダンスアミーガでもこの“偉大さ”の前には無力か。

エリーザベストはボールドブライアン(東京新聞杯)の姪で芝もこなせなくはないが代々アウトブリードの配合で緊張感がゼロ。こちらもサンデーの力だけでは限界は否めない。