ネヴァブション、ありがとう#5

ネヴァブションは伊藤先生の愛息子です。

ボルトが入ったネヴァの脚は夏は熱を持ちやすく、冬は寒さで軋みます。
ネヴァがデビューして8年。頑張るネヴァがこの脚を背負ってから、伊藤先生はそれまで以上にネヴァのケアを念入りにしています。

伊藤先生の愛情は、まさにネヴァのこの脚に凝縮されているんです。

ネヴァはもともとそこまでパドックで気配を出さないので、静かに回っています。

黒鹿毛の馬体に透き通る薄茶色の瞳。ほんのり見える流星。

中山で見る半年以上ぶりの彼。

元気でした。素敵でした。

そして何より、この写真の瞬間を見られたことが最高に幸せでした。

「とまれ」の号令に佇むネヴァに駆け寄る伊藤正徳先生。

めっきり白髪になった先生が、弟子の後藤騎手を連れてネヴァブションに近寄ります。

すると同時に思い切り手を伸ばしてネヴァの顔をこれでもかというぐらい撫で褒めていました。（書いている今も写真を見ては泣いています(^_^;)）

愛情たっぷりに、これでもかと撫でまわして、後藤騎手に託しました。

その間、ネヴァは嫌がるなんてことはまったくなく、されるがままに目を閉じてその愛情を受け止めていました。

ひょっとすると

「わかってるよ、先生。もう撫ですぎだよ。はいはい、ありがとう。」

という感じにも見えるようでした。

厩務員さんが、伊藤先生が、後藤騎手が、ネヴァブションを囲んで微笑んでいました。

もう最高に嬉しくて、嬉しくて。

「後藤さん、乗ってくれてありがとうございます。頑張ってください」

と声をかけました。

すると穏やかに微笑んで、会釈をしてくれました。



レースがどうこうなどと言うことはありません。
ただ無事に完走してくれたことで私にはもういっぱいです。

もしかしたら、これが最後で、それで伊藤先生が、後藤騎手に頼んだのではないかと、思うのは私の贔屓な思い込みでしょうか。

愛されて8年間も競争生活を送ってきたネヴァブションがこれからもどうか健康に幸せに過ごせるように。

切に願う一日になりました。

ありがとう、ありがとう、ありがとう、ネヴァブション。