エイシンフラッシュ、ありがとう。

しなやかに風をきる背中、なびく鬣と流れるような尻尾、悠然とした歩様、遠くを見つめる澄んだ瞳

耳の先から蹄の先まで「いつも通り美しい」、エイシンフラッシュがそこにはいました。

画質は悪いですが、この二枚、私のお気に入りです。

中山のゴール板奥から現れた彼の姿を捉えた瞬間、涙が溢れました。

感情ばかりが先走って、何を思い出して泣いていたのかわからない。

ただ、寂しくて。常歩の彼を見ているのが無性に寂しくて。

この緑の芝生を切り裂いて駆け抜けた目を瞠る彼の瞬足が、今は穏やかにターフを踏み鳴らしている。

それが私に時代の終を感じさせました。

黄色い惜別の声を受けながら、彼は悠然と歩き続けます。時折立ち止まり、ふと何かを思い出すように遠くを見つめ、また歩き出す。

その所作全てが、「いつも通り、美しい」

見惚れながら、無事でいることへ感謝の気持ちがこみ上げてきました。そしてまた、涙が溢れ出す。

藤原厩舎が自作したフラッシュのVTRはあまりにも愛に溢れていて。

寒さを忘れて心がふるえました。涙が止まらない。

エイシンフラッシュと過ごしたかけがえのない日々。

歓喜、苦渋、笑顔、涙…―

駆ける時も、憩う時も、カメラを向けている視線そのものが親愛で満ち溢れているようでした。

「日本男児のように、いつもひたむきに弱みを見せず我慢強く頑張る子です。いつも元気に表舞台に立っていましたが、そこに至る苦労を少しでも分かっていただきたく、エイシンフラッシュの軌跡を映像にまとめました。」

先生は今日もまたいつも通り、エイシンフラッシュを褒めていました。
そして晴れやかな顔をされていました。

あの記者会見の前後、先生はどれほどの涙を出し切ったのでしょうか。第二の馬生を歩む彼の今日という晴れ舞台のために。

いくつもの日々を超えて辿り着いた今がある―

これほどに愛されてダービー馬となり、天覧競馬の頂点に立ち、無事6歳にしてターフを去る美しい英雄は、このエイシンフラッシュただ一頭です。