スタホに甦る迷馬?!?ゼッケン番号6番が魅せた奇跡?

皆さんこんにちはミズホ厩舎です

前回は、関東の黒い刺客と謳われた、ライスシャワーの姿を記しましたが、私自身も、書きながら少し涙目になるという、なんともお恥ずかしい始末
とは言え、一人でも多くの人に、ライスの名前が刻まれたなら、これほど嬉しい事はないです□

さて…今回も、淀で生まれた大輪の記憶を記したいと思います
が□今回は、悲劇というより喜劇□いや□奇跡のような記憶です

43060円

これは、今回の物語の主役が叩き出した、未だ破られていない記録の数字です□

20頭立ての20番人気という、勝利から一番遠くにいたはずの一人の乙女が、実況アナウンサー杉本清さんを、最後の直線で焦燥させました

彼女の名は…サンドピアリス「砂の貴婦人」という意味をもつ名を授かった彼女は、一介の条件馬に過ぎませんでした
父を、元祖アイドルホースと呼ばれた、地方競馬出身のハイセイコーに持ち、母もダート戦で活躍した実力馬
その家系に産まれてきた彼女へ、関係者がダートでの活躍を期待するのは、至極当たり前の事だったと思います□
「砂の貴婦人」そのままに、ダート戦では初戦から2戦2勝このまま、ダート戦線の主役へ踊り出るか
と思いきや…その後は立て続けに2連敗□競馬の世界は甘くないですね

そんな折り、彼女に携わる関係者の間で、一つの話が持ち上がっていました
一口馬主の初年馬であったピアリスを、G?の舞台に出走させたいという依頼でした
この話に、調教師の吉永さんの、それならG?騎乗経験のない岸滋彦騎手を、エリザベス女王杯で乗せてあげたいという思惑が重なります
岸さんは、私の大好きな騎手で、今は調教助手になっています□スタホをやり始めた時は、岸さんに、毎回騎乗を依頼していました□

かくして、一介の条件馬だったピアリスは、関係者の思惑が手綱を引いて、G?の晴れ舞台エリザベス女王杯への出走に向かいます
出走させたい…その気持ちが、まさか史上に残るべく奇跡を生み出すとは□この時、誰も知らなかったでしょう

当時のエリザベス女王杯は、牝馬のクラシック最後の冠で、距離も現行より少し長い、2400mでした
ピアリスは、20頭立てのレースで20番人気…まぁ当然ですよね□一介の条件馬が、格上挑戦でしかもG?の舞台例えるなら、世界陸上の100m決勝に、陸上部へ入りたての高校生が参加したようなもんですから
もし、これがダートなら…得意と思われる砂の上なら…でも20番人気だったでしょうね□
3枠6番のゼッケンをつけ、G?の大舞台に飛び出したピアリス鞍上は、これまたG?初騎乗の岸滋彦騎手
きっと、4コーナーを過ぎるまで、彼女の名前を記憶していた観客は、ほとんどいなかったでしょう
最後の直線を迎え、ゴールに向かって乙女たちは、最後の冠を賭けた力比べに入ります□
誰が先頭に立つのか…その時、実況の杉本さんから意外な言葉が□

「おお!なんとサンドピアリスだ!!」

馬群の真ん中から、ピアリスが伸びてきたのです誰もが、我が目を疑う光景だったと思います□
一介の条件馬が、20番人気という最低人気の馬が、期待されたダートではなく芝のレースで、ピアリスは失速することなく、そのままゴール板を駆け抜けました

「これは驚きました!ゼッケン番号6番、サンドピアリスに間違いない!」

数々のレースを経験してきた、杉本さんでさえ、一瞬絶句してしまうほどの番狂わせ
それは、杉本さんだけに及びませんでした事もあろうに、調教師の吉永さんや、鞍上の岸さんでさえ、勝利インタビューで…

「サンドピアレス」

と、名前を間違える始末
関係者でさえも混乱するほどの快挙それもそのはず…
このレースで付いた、単勝馬券の配当は43060円という、日本の競馬がグレード制に移行して以来、前代未聞の配当額となりました
これは、未だに破られていない、ピアリスが遺した奇跡の記録です□
その後、ピアリスがレースで勝つ事はありませんでしたが、京都大賞典を3着、京都記念(当時2400mで施行)を2着に入るという、牡馬相手でも好勝負を演じました
エリザベス女王杯の奇跡は、決して奇跡ではなく、本当に実力を携えての勝利だったと思います
共通するのは、好勝負をしたレースが、全て淀の2400mまさに淀のクラシック・ディスタンスの申し子だった訳です

スタホでは、一発継承型の繁殖牝馬に名を連ねるサンドピアリス□砂の貴婦人は、その記憶をターフの大舞台に遺しました
一介の条件馬に過ぎなかった乙女は、出走する事が夢だった関係者の望みに、G?勝利という形で応えました
彼女が記した奇跡は、どんな境遇であっても、如何なる舞台であっても、可能性がゼロではない事を、私たちに教えてくれたのだと思います□

スタホに甦る迷馬…名馬にしなきゃピアリスに怒られそうですね□