北九州記念を予想するつもりが、悪い思い出

北九州記念を予想するつもりが、悪い思い出を書くことになった。

　うちが北九州記念を勝ったときは、まだ１８００ｍだった。
その追いきりは一本だけ、６F７８秒６。
１６頭併せ芝コースで行いました。
確か西谷さんは武騎手に
「直線だけ追ってくれ、勝ったらやめてもいいから。」
という指示だったような。

　この追いきりというか１２００ｍ芝９００万下のレースですが、
今思い出しても、馬に申し訳ないというひどい出来で使いました。
というか、出来も何も、翌週の重賞使うために使っただけです。
骨折明けで時間もなかったので、追いきり換わりに使いました。

　負けるわけがない。

　関係者全員そう思って、レースに使いました。
　

　前日に北橋先生に
　「おい、併せ馬替わりに１２００ｍを使うんだろ？しかも鹿児島から持ってきた
　ばかりで一本も追いきりしていないだろ。お前、馬見たか？
　うちなら絶対に登録させんぞ。登録すらさせない。
　でも、あの馬なら今週も来週もそれで勝ってしまうから、憲ちゃんも社長も
　反省せんわな。馬にとっていいわけないだろ？」
　といわれたいわくつきのレースでした。
　
　実際パレードリングで見て、真っ青になるぐらいのひどい出来でした。
　勝った後、武さんが上がってきたときに、挨拶したのですが、私がものすごい
　顔をしていたらしく、武さんびっくりしていました。JRAにいた先輩も私の顔を
　見て、すぐに気がついて、
　「どうしたの？」
　と聞かれ、
　「馬の出来がひどくて、びっくりしているんです。」
　と答えたら、２着以下の騎手たちにダンディコマンドのことを聴きに行って
　くれました。

　人生の中で軽率な行動で恥をかいたり、後悔したりなんてたくさんあります。
しかし、記憶の中で、あれはなしにして欲しいと思う後悔が競馬だけで２つ
あります。その一つがこの北九州記念とその前の追いきりがわりの雲仙特別
です。

　正直１８００ｍでやろうが、１２００ｍでやろうが、ダンディコマンドに武豊を
乗せている限り、普通の出来ならG３くらい負けるわけがない。
今でもそんな風に思っています。本当に馬に申し訳なく思っています。
イクノディクタス号とダンディコマンド号はまったく違う馬であることを理解して
いませんでした。
　ダンディコマンド号がデビューして５００万下勝ったくらいの頃に西谷さんは
「２頭立てなら、２０００ｍまでなら全盛期のイクノディクタス号でも
今のダンディコマンド号にはまったく歯が立たないよ。」
そう言われていい気になって無茶していました。
競走馬の能力は、ダンディコマンド号にまったく歯が立たないかもしれなかった
かもしれませんが、イクノディクタス号は　マイルチャンピオンから　ジャパンカップ
へと連闘してもびくともしない頑丈な体がありました。

残念ながらダンディコマンド号が残した記録は、おそらく世界記録であろう
骨折６回とか７回とかいう記録だけです。