負けたくない勝負（レース）と負けられない勝負（レース）

いよいよ古馬の春の大一番「春の天皇賞」である。
出来れば勝ちたかった京都記念、出来れば負けたくなかった大阪杯、そしていよいよ負けられない負けてはいけない春の天皇賞になった。これは自分の馬券の話しでも(笑)キズナ自身のことでもない。騎手武豊にとっての話しだ。
彼は普段「勝ちさえすればいい」と言う美学で騎乗をしていない。彼にとっては勝ち方はただ勝つことよりも重いのだと思う。
それは時には物足りないこともある。フェアな乗り方故に少々手洗いアンフェアに屈することもある。彼は第一人者であり、何十年も競馬界をリードしてきた人物なのだ。そしてその意味を彼自身が誰よりも理解し振る舞っている。だからこそ、成績が落ちても以前の様に勝てなくなっても以前と変わらずファンは彼を応援し、愛しているのであろうと思う。その頃は僕はファンではなかったが(笑)
しかし、それは敢えて言うならば彼の表の仮面である。誰よりも負けず嫌いで、勝負に拘り貪欲だからこそ残せた102個の勲章だ。フェアプレーなイメージが強いが、実はＧ１では何度か降着処分になっている。本当に勝たなければいけない、負けられない勝負になった時刀を抜いて勝負にでるのだ。その勝負に出たレースが最近では二度ある。久々のＧ１勝利になった時のマイルチャンピオンシップとダービーである。この二レースに共通するのはやや強引に馬群を割って出てきたと言う事である。普段は無理にこじ開けるのではなく、ばらけるのをじっと我慢する騎乗が多い。それが待てるのも彼が一流たる所以だが、それで勝負時が過ぎてしまうこともある。それも競馬だと言い聞かせるように。しかし、ここで勝たなければ未来がなくなるような勝負時はその伝家の宝刀を抜くのだ。ここ２戦の敗戦と去年の敗戦でキズナもユタカも追い込まれた。今、目先の勝敗に惑わされやすい者たちからは疑心暗鬼の目を向けられている。これを払拭するにはもう天皇杯を享け賜わるしかない。
この２戦ではキズナに勝たせて貰う競馬をしてきたが、それだけでは通用しないことが分かった今、今度はユタカがキズナを勝たせる競馬をしなくてはならない。厄介なのは相手だけでない。先行有利と言われる高速馬場も決して味方ではない。だからと言って今さら先行したりするはずもない。普段レース前に戦法を明かすことをしたがらない彼が敢えてスタイルは変えませんと明言したのは覚悟と自信があり、雑音をシャットアウトするためだろう。個人的にはキズナでトーセンラーの競馬をすれば勝てると思うが今イメージにあるのはダンスインザダークでの菊花賞だ。あのレースも皐月に出られず、ダービーも２着に負けてしまい落とせない３冠最後のレースだった。あれを勝っていなければ種牡馬になれていなかったかも知れない。だから、今回は黙ってキズナから勝負をする。勝負はするがどれくらい勝負をするかは？枠順次第かな(笑)６番より内なら大勝負だ！そして今年の春天は荒れないと思う。荒れそうな時、固そうな時、得てして裏目に出るのが勝負事だ。今年はマイネルキッツやビートブラック、イングランドディーレを探す必要はない。スズカマンボはいるかも知れないけど(笑)