いくつもの思い。いくつもの願い。されど叶うのはひとつ。第81回日本ダービー観戦記

あくまでも個人的な見解ではあるが、競馬中継をしている某民放の青○アナの実況があまり好きではない。サッカー中継は名前を連呼するだけだし、昨日のダービーも何馬身離れてるではなく「大分離れています」のお粗末さだった。なので、昨日のように他局でも中継をしている時はそちらを見るようにしていた。しかし、昨日は返し馬をチェックしてから馬券を購入していたためファンファーレ直前にＴＶの前に来たのでついついそのまま見てしまった。
実は民放は独自のカメラで実況しているがその他はＪＲＡと同じ映像を使用している。故にこの日自分が他局での放送を見ていたらトーセンスターダムに何が起こったのか？分からないままだったと思う。ＪＲＡの映像だとカメラが切り替わるとただずるずるとだらしなく下がっていく映像が映っているだけであった。しかし、昨日のレースで最も上手く進めていたのはトーセンスターダムではないかなと思う。武豊によってコントロールされた競馬は、かなりのスローペースに落とされ後続が折り合いに苦労していた。それでなくとも異常なまでに前残りのインコースが有利な馬場なのにスローペース。もう後ろからの馬に何かを求めるのは不可能状況が出来上がり◎に恥じない結果になることを確信した瞬間だった。ユタカが左からムチを入れてるにも関わらずトーセンスターダムは飛び出すように左側に斜行し、あろうことかラチに激突したのである。激突した様子はパトロールビデオでも確認できるが上からの角度なので細かい様子が分かりにくい。しかし、ＴＶにはその様子が良く映っていた。右ムチから左ムチに変えたのを合図かのように手前を変えたトーセンスターダムはその瞬間間違いなく伸びかかりそして何かに驚くように飛び跳ねて内ラチに激突。何とか落馬せずにバランスを保ったが、そこからの逆転はもう無理だし、ぶつかってしまっているわけだからケガなどの恐れもある。その瞬間冷静な彼はダービー二度目の連覇を諦め、一度もムチを入れることも追う事もせず静かにトーセンスターダムの無事だけを願ってゴールさせたのである。その眼前にアクシデントさえなければ壮絶な叩き合いに参加できたであろう尊敬する先輩と見習い時代に新宿でアイスを一緒に食べた同期の熾烈なデットヒートを横目にしながら。こうして、81回目のダービーは定年を控えた橋口先生とその厩舎の馬に跨り幾度となくＧ1の大舞台で２着に甘んじてきた横山典騎手の思いと願いを叶えた。それはトーセンスターダムを応援し、イスラボニータの素質に惚れ込んでいた僕にしても一番叶ってうれし願いだと素直に思えるものだった。ワンアンドオンリーが勝ったけれど、ワンアンドオンリーが勝てる要素より勝てない要素の方が多かったように思う。それだからこそこの勝ちを引き寄せたのは騎手だけでなく、調教師だけでなく、その二人の思いが重なったこそだからともう。それはきっとこの後歴史が証明してくれるだろうと思う。今年の３冠は３頭で分け合う事になるだろう。その３つ目をトーセンスターダムは取りにいかなければならない。あの真夏のように暑い日に行われた日本ダービーはやはり３強対決だったんだと。あのアクシデントがなければトーセンスターダムが勝っていて橋口先生の願いを打ち砕いてしまっていたかも知れないね？と。今年のダービーを見たすべての人たちがそう思える活躍を期待したい。あの一瞬伸びかけた脚色が幻ではなく、また偶然ではなく目にしたものだと思えるように。橋口先生おめでとうございます。この勝利は騎手を信じ、己を信じ貫いてきたが故の勝利だと思います。そして、ダンスインザダークで叶えられなっかった豊ちゃんからのプレゼントでもあります（笑）