「運」というものについて1

宵の口、地震が起こりました。震源地近くにお住まいの方は、去年のあの日をすぐさま思い出し、身の凍る思いだったと推察します。
俺の住んでいる地域は、「久しぶりに長く続く揺れだな」程度の体感で済みましたが、地震は未だに予想する手段が確立されておらず、それ以前に、地殻というものがどう動くのかについてすら、学者により意見が分かれていると聞いたことがあります。有名な「プレートテクトニクス理論（地球の表面は固い岩板がいくつも重なってできており、それらが対流するマントルに乗って流れるという考え方）」でさえ、ひとつの学説であり、完全に証明されたわけではありません。ちなみに、進化論もひとつの「学説」です。

ところで、先日、山梨県、中央道の笹子トンネルで、あまりに凄惨な事故が起きました。別に隠す必要はどこにもないので書きますが、俺は山梨県に住んでいます。東京に行くのには、高速バスをよく利用します。それはもちろん中央道を経由しており、そのほか、家族での旅行など、東京方面では幼い頃から数え切れないほど通った、近所の馴染み深いスーパーのように当たり前に存在するトンネルです。
このトンネルは、俺の知っているトンネルの中でも特に長く、入ってから抜けるまで五分弱ほどかかるので、いつ終わるともしれない暗闇の長さに、少し不安になる場所です。

遠征バイトの帰り、11/29の深夜に、笹子トンネルを抜けています。いつものように。俺は寝ていたので通り過ぎたことすら気づきませんでしたが。
それから月が変わって12月の頭、あのトンネルの天井は突然崩落し、大勢の人々が焼死、身元も分からないような状態で発見されたそうです。ニュース等でご覧になった方も多いと思います。

あの時死んでいたのはもしかしたら…。
しかし、不思議と自分は、それはないな、と思いました。
これをなんと説明したらいいのか分からないので、仮に「運」と呼びます。
寿命が来るまで、人は死なないと思っています。でも、明らかにまだその時ではない。ならば、いかに危ないところでニアミスしていたとしても、「運」の良さ、作用によって不思議と自分の命は長らえるものです。
それにしても、あの杜撰な管理はひどかった。事故が起こってから初めて動き出す。やりきれず、悲しいことです。亡くなられた方々の冥福を、心よりお祈り申し上げます。
先日、また用事で東京に出かけていました。どうしても高速バスの方が大幅に安いので、また利用しました。一般道を迂回し、また高速に戻るというルートでしたが、心中複雑なものがありました。バスは、ガラガラでした。

私事で恐縮なのですが、東京へは病院に行っていました。
10年前の、ふとした、とてもくだらない、口にも出せない理由（そのこと自体は関係ないそうで、そこから派生したショックが原因ではないかと推測されますが）によって、一種の鋭い神経痛を起こしました。
説明しづらいのですが、あごの、奥歯の下周辺、耳の付け根から下のあごのラインの内側などに、締め付けるような、ズキズキとした痛み。そして首筋のこわばりと、締め付けられるような頭の痛み。意識のある間、これが続きます。
とにかく何をしていても集中力が続かない。本が読めない。気持ち悪くなってきて熱が出てきてしまって。映画も観る気力が出ない。外出する気になれない。緊張が続く。
以前から肌が敏感で、すぐ乾燥してやたら痒くなるので、複合して夜中眠れなくなることなんか日常茶飯事でやんすよ。ダブルパンチってやつでしょうか。ネコパンチじゃないですよ。有馬記念人気投票18位には笑いましたね。

で、ですね、そこを押して、かじりつくように一ページずつ読んでは休み（「罪と罰」を読み終わるのに3週間以上かかりました）、映画は気分が大丈夫なときに何度かに分けて観て、でも音楽だけはかかさず聴いていました。大学四年で音楽サークルってやつにも思い切って入り（留年が決まったんで…）、ライブで思いの限りを歌い叫びました。歌っている間は痛くない。いまだに語り継がれる「部室にいきなり変な人が来た」伝説。今でも部屋で一人ライブやってますが。
競馬もそうですね、レースを予想し、観戦している間は痛みを忘れます。

あの日の爆発的な痛みから10年、今も、書いているこの今も、痛みをこらえています。あと日中いきなり心臓がドキドキするんですけど気のせいでしょう。
当時は学生で、事情が事情だけに、ごくごく親しい友人を除いて誰にも言えず（医師には素直に言いましたが）、両親に打ち明けたのが5年後、大学をかろうじて卒業して実家に戻った時でした。それまでにも、色々な病院、科を受診し、スキャン、血液検査など繰り返しましたが、どこにも異常はなし。気が狂わなかっただけ立派なのですが、社会的には完全に「何もしてない人」です。


つづく。