(^_^)／ユトリナ?( 耳なし…?) ?(^_^)

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『耳なし芳一』


むかし むかし 今の下関(山口県)に 阿弥陀寺(真言宗の寺)という寺がありました。

その寺に 芳一という びわ弾きが おりました。

芳一は幼い頃から 目が不自由だったために びわの弾き語りを しこまれ
まだ ほんの若者ながら その芸は師匠の和尚さんを しのぐ程になっていました。
阿弥陀寺の和尚さんは そんな芳一の才能を見込んで 寺に引き取ったのです。

芳一は源平の物語を語るのが得意で とりわけ壇之浦の合戦のくだりのところでは その真に迫った語り口に 誰１人 涙をさそわない者は いなかったそうです。

その昔 壇之浦で 源氏と平家の長い争いの最後の決戦がおこなわれ 戦いに敗れた平家一門は 女や子供に いたるまで 安徳天皇として知られている幼帝もろとも ことごとく 海の底に沈んでしまいました。

この悲しい平家の最後の戦いを語ったものが 壇之浦の合戦のくだりなのです


ある 蒸し暑い夏の夜のことです。

和尚さんが 法事で出かけてしまったので 芳一は １人で お寺に残って びわの稽古をしておりました。

その時 庭の草が サワサワと波のように揺れて えんがわに座っている芳一の前で 止まりました。

「芳一！」 「芳一！」

「はっ はい どなたさまでしょうか 私は目が見えませんもので」

すると 声の主は こたえます。

「わしは この近くにお住まいの さる身分の高い お方の使いの者じゃ、 殿が そなたの びわと語りを聞いてみたいと お望みじゃ」

「え わたしの びわを？」

「さよう やかたに案内するから わしの後に ついてまいれ！」

芳一は身分の高い お方が自分の びわを聞きたいと望んで おられると聞いて すっかり嬉しくなって その使いの者に ついて行きました。

歩くたびに ガシャガシャ と音がして使いの者は ヨロイで身を固めている武者だと わかります。

門をくぐり 広い庭を通ると 大きな やかたの中に通されました。

そこは 大広間で 大勢の人が集まっているらしく サラサラと衣ずれや ヨロイの触れあう音が聞こえていました。

１人の女官が言いました

「芳一や さっそく そなたの びわに合わせて 平家の物語を 語ってくだされ」

「はい 長い物語ゆえ いずれの くだりを お聞かせしたら よろしいのでしょうか？」


「…… 壇之浦の くだりを」

「かしこまりました」

芳一は びわを鳴らして語り始めました。
ろを操る音、 船に当たって砕ける音、 弓鳴りの音、 兵士たちの雄叫びの声、 息たえた武者が海に落ちる音、
これらの様子を静かに もの悲しく語り続けます。

大広間は たちまちのうちに 壇之浦の合戦場に なってしまったかのようでした。

やがて 平家の悲しい最後の くだりになると 広間の あちこちから むせび泣きがおこり
芳一の びわが終わっても しばらくは 誰も口を聞かず シーンと静まり返っておりました。

やがて さっきの女官が言いました。

「殿も たいそう喜んで おられます、 良い物を お礼に くださるそうじゃ。
されど 今夜より ６日間 毎夜 そなたの びわを聞きたいと おしゃいます。
明日の夜も この やかたに参られるように。
それから寺に戻っても この事は誰にも話してはならぬ、よろしいな」

「はい」

次の日も 芳一は迎えに来た武者について やかたに向かいました。


(明日に続く…)


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