ヒシアマゾンの話(第６話)

こんばんは(*・∀・*)ノ

「ヒシアマゾンの話」の第６話を書かせていただきます。

外国産馬であるがゆえにクラシックに出られず、裏街道を進むしかなかったヒシアマゾン、彼女にできることは出るレース全てに勝ち続けることだけでした。
クイーンCを勝ったヒシアマゾンの次走はクリスタルC、初めての芝1200戦でした。

☆1994年4月16日、春の日差しが眩しい中山競馬場で第８回クリスタルCが行われました。
ヒシアマゾンはここでも1番人気(2.0倍)、朝日杯2着のフィールドボンバー(3.0倍)を差し置いての1番人気でした。

ヒシアマゾンが芝1200m戦に出走するのは初めてでした。
クラシックに出られない外国産馬が出走できる重賞は限られていたので選り好みをする訳にはいかなかったとはいえ、マイルで良績を残していたヒシアマゾンにとって1200mは決して適距離とはいえませんでした。

手綱を取る中舘英二騎手も「ヒシアマゾンは本質的にスプリンターではない。千二の流れに対応できるかどうか...」と、追走に不安を覗かせながらの出走となりました。

中舘騎手の不安は的中してしまいました。
前半600mの通過タイムは33秒3、スプリント戦特有の速い流れに戸惑ってしまったヒシアマゾンは中団の後ろでもたついていました。
第4コーナーを過ぎてもヒシアマゾンは7〜8番手、軽快な逃げで先頭をひた走る4番人気タイキウルフとの差は5馬身以上ありました。

直線に入ってもタイキウルフの脚色は衰えません。
外に持ち出したヒシアマゾンが残り200mで2番手に上がった時もまだタイキウルフは3〜4馬身前にいました。
短い中山の直線では捕らえるのは絶望的な差です。
中舘騎手も調教師席にいた中野隆良調教師も「今日は2着か....」と諦めざるを得ませんでした。

しかし、ヒシアマゾンは諦めていませんでした。
まるでロケットエンジンに点火したかのようにヒシアマゾンは加速します。

タイキウルフの手応えはまだ十分に残っていました。
しかし、ヒシアマゾンの鬼脚はタイキウルフを軽く凌駕していました。
残り100mを切ったところでもタイキウルフとの差は3馬身ありましたが、ヒシアマゾンはわずか100mの間に3馬身差を追いつき、逆に1馬身突き放しました。

1馬身突き放したところがゴールでした。
1着ヒシアマゾン！
常識では計れない鬼脚を目にした観衆はただ驚愕し、感嘆するしかありませんでした。
ラスト1Fのタイムは11秒8、当時の中山芝コースの状態を考えたら、これだけのタイムを出したことは驚異的というしかありません。

「凄いですよ、この馬は！僕だけじゃなく皆さんが想像していたよりも凄い！」

逆転するのは不可能と思える位置から、いや逆転など不可能な位置から異次元の末脚を繰り出したヒシアマゾンを中舘騎手は興奮ぎみに誉め称えていました。

興奮ぎみなのは観衆も同じでした。
皆が奇跡を目撃し、伝説の生き証人となったのです。

第８回クリスタルCはヒシアマゾンのファンを爆発的に増やしただけでなく、「奇跡の鬼脚」として現在に至るまで語り継がれる伝説のレースとなりました。


今回はここまでとさせていただきますm(__)m