ライスシャワーの話(第１１話)

「ライスシャワーの話」の第１１話を書かせていただきます。

第５３回菊花賞、2番手に控えたことで折り合いを欠いた1番人気ミホノブルボンにさらなる試練が待っていました

☆「京都には坂があります。ゆっくりと上り、ゆっくりと下らねばなりません」
杉本清氏がこう語った淀の坂は、いつの時代も難所として疾走する馬たちの前に立ちはだかってきました。

それは無敗の三冠制覇を目指すミホノブルボンも例外ではありません。
第２コーナーから第３コーナーにかけての長い上り坂、第３コーナーから第４コーナーにかけての長い下り坂は距離の壁に挑むミホノブルボンにさらなる試練を与えるかの如く、彼を消耗させました。

ただし消耗するのはどの馬も同じこと、とりわけ先頭を走るキョウエイボーガンには堪えたようで、2番手を走るミホノブルボンとの差はみるみる縮まっていきました。

前を行く2頭が消耗する中、ミホノブルボンをマークしながら3番手に位置するライスシャワーは十分な手応えのままで追走していました。
手綱を取る的場騎手にはミホノブルボンが折り合いを欠いていること、鞍上小島貞博騎手の手綱に伝わる手応えも良くないということがはっきりとわかっていました。
「これなら勝てる！」
的場騎手の自信は確信に変わっていました。

第４コーナー手前でキョウエイボーガンは力尽きて下がっていき、ミホノブルボンが待望の先頭に立ちました。
ミホノブルボンが先頭に立った瞬間、それはライスシャワーにとっては追撃の合図でもありました。
的場騎手はライスシャワーに追撃を命じ、ライスシャワーも十分な手応えで応じました。
まさにその時、彼のステイヤーの素質が開花したのです。

「三冠街道」を通って直線に入ったミホノブルボン、あと400m少々先頭をキープすれば無敗の三冠馬の誕生です。

しかしミホノブルボンは後続を突き放せません。
皐月賞とダービーで見せた二の脚を使えず、一杯になってしまいました。
それでも先頭を走り続けるミホノブルボン、しかし後ろから黒い弾丸が襲いかかります。

ライスシャワーです。

マチカネタンホイザを引き連れたライスシャワーが外からミホノブルボンに並びかけ、そして抜き去りました。

一気に突き放すライスシャワー

ミホノブルボンも食い下がりますが、マチカネタンホイザにも交わされました。
しかしミホノブルボンも粘ります

マチカネタンホイザを差し返してライスシャワーを追いかけ続けました。
しかしライスシャワーの末脚は衰えません。

どうしても縮まらない差、それは2頭の成長曲線が交差したという証明でもありました。
ミホノブルボンはもう限界でした。
もうライスシャワーより前には行けないのです。

ライスシャワーはミホノブルボンに1馬身1/4の差をつけて先頭でゴール、5度目の対戦で遂にミホノブルボンを破り、クラシック最後の一冠をもぎ取りました。

ライスシャワーが1着でゴールした瞬間、京都競馬場に詰めかけた十数万人の観客から悲鳴があがり、そして暫くの間沈黙がありました。
ライスシャワーに対する拍手や歓声は...ほとんどありませんでした(-_-;)

みんなミホノブルボンの三冠制覇を目撃するために京都競馬場にやってきたのでした。
ライスシャワーがクラシック最後の一冠を勝ち取ることを期待していたわけではないのです。
観衆の中にはライスシャワーにブーイングを浴びせる者さえいました。


第５３代菊花賞馬は、史上最も祝福されない菊花賞馬となってしまったのです。


※今回はここまでとさせていただきますm(__)m