サクラスターオーの話(その4)

「太をサクラスターオーから降ろせ！」

サクラスターオーのオーナーである全演植氏は突然、電話で平井雄二調教師に指令を出しました。
過去3戦すべてで手綱を取り、弥生賞にも騎乗することが決定していたにも関わらず、小島太騎手はサクラスターオーから降ろされたのです。
平井師は突然の指令に困惑すると共に恐怖さえ覚えたそうです。
小島騎手が「サクラ軍団」の有力馬から降ろされることなど前代未聞のことです。おまけに平井師は開業したばかりで厩舎所属の騎手も気軽に騎乗を頼めるほど懇意にしている騎手もいませんでした。

全オーナーはなぜ、小島騎手を突然降板させたのでしょうか？
これについては関係者の説明がほとんどないために推測の話しかできませんが、「サクラの馬でしか勝てない」という陰口を叩かれていた小島騎手が憤慨し、全オーナー以外の馬主との関係作りに腐心するあまり全オーナーとの関係を疎かにしてしまっていたことに全オーナーが激怒した、という説と、競馬サークル内で悪評が出ていた馬主と小島騎手が親しくしていることを心配した全オーナーが何度も小島騎手にその馬主とのつきあいを止めるように忠告したものの、小島騎手が全く聞く耳を持たなかったので全オーナーが制裁を加えた、という説が有力なものとして伝えられています。

ただ、これだけは強調しておきますが、全オーナーは小島騎手を息子のように可愛がっていました。
個人的な意見を述べさせてもらうと、今回の乗り替わりは全オーナーの「太、頭を冷やせ。そしてよく考えろ」という小島騎手へのメッセージだったのではないかと思います。
小島騎手はその後全オーナーとの関係は修復されて、再び「サクラ軍団」の主戦騎手としてサクラチヨノオー、サクラバクシンオー、サクラローレルなどの手綱を取ることとなります。

話を平井師に戻しましょう。
突然の降板指令に困惑した平井師は思い悩んだあげく、騎手時代の師匠である境勝太郎調教師に相談しました。
実はサクラスターオーは最初、境厩舎に所属するはずだったんですが、全オーナーの要請を受けた境師が愛弟子である平井師にサクラスターオーを譲る形で平井厩舎に入ることになった、という経緯があるんです。
平井師から相談を受けた境師は愛弟子の一人でもある中堅騎手を推薦しました。
「代打屋」こと東信二騎手です。

※今回はここまでとさせていただきますm(._.)m