92件のひとこと日記があります。
2015/07/20 20:39
愛される残酷
競馬は残酷だ。
非情で、エゴで、人の欲で渦巻いている。
綺麗事を並べても、ギャンブルはギャンブルだ。
儲けさせない馬は速やかに見捨てられる、
そしてその後、彼らがどうなるのか、私たちは知っている。
それでも、
私たちは競馬が無くなれば良いとは思わない。
目の前で歴史が塗り替えられていく奇跡、
命がけで走って、
命がけで自分の命をつないでいく、
競走馬の、負を背負った輝き、
その生命の圧倒的な光が、
見たい。
私は自分を、人間を、残忍で残酷で非情だと知っている。
私は引退する馬のその先まで敢えて想像しないで、それでも言う、
「どうか、幸せに過ごして下さい」
彼らがいきることのなにの助けにもなれないことを知っていて、
それでも、こんな言葉を無責任に願う。
引退した彼らが、
「どうか、彼らが幸せでいられますように」と。
そしてその言葉がどれほど無責任な願いかわかっている。
トウカイトリックは、厩舎で一番の稼ぎ頭で、
厩舎にとって、とても大切な馬だったろうと思う。
オープン馬を管理できる、
それがどれだけすごいことで、
オープン馬を勝てるように仕上げること、
11歳まで勝負させること、
この馬がどれほど厩舎で大切にされたのか、
彼らがこの馬にどれほどの夢を見たのか、
レースを見るだけの私たちの想像を越えるだろう。
エサを与え、声をかけ、走り方を教え、勝ち方を教え、
どんな夢を見ているのかと微笑みながら寝息を聞き、
怒りだす馬を宥め、
悩みを聞くように我儘を聞く、
何千回も鼻がしらを撫で、
叱りつけ、
笑い、
泣いただろう。
どれくらい稼げれば一年後この馬が生きていられるかの切実な計算をし、
勝てよ勝て、勝ってくれよ、と両手を握りしめ、
勝てなかった馬を両手を広げて迎える、
「次は勝たせてやる」と未来を睨みながら、
この馬に費やされた人間の誠意は、
きっとトウカイトリックに伝わっていたはずだ。
わたしはこの馬は愛されたと思う。
パドックを歩くこの馬の、
年齢を感じさせない成熟した姿は、
愛が無ければ実現しなかった、
あの姿は馬の生かせ方の最高のかたちのひとつを体現したものであったと思う。
この馬は絶対に愛されていたと思う。
だから、種馬ではなく誘導馬になったことも、
それがこの馬の成績と運命が勝ちえる最高のかたちを、
一生懸命探した結果だったのだろうと思う。
「お願いします」と探して頼んで頭を下げて、
「この子を一生」と膝におでこをすりつけて頭を下げた結果だったのだろうと思う。
「これ以上ない」と、この馬の幸せを探した結果だったのだと思う。
そう思う。
この馬を、
この馬に関わったひとたちが、
この馬を愛した人たちが、
不幸に扱ったわけがない。
最高のかたちを模索して、幸せになれるように祈って、願うように送り出したはずだ。
不幸にも、
トウカイトリックは、命を落とした。
誘導馬にならなければ、
他の何処かでもっともっと愛されて、何十年と生きたかもしれない。
トウカイトリックを幸せにしたくて人間がやったことは、
エゴだったのかもしれない。
競馬がそれで動いているように。
でも、
たとえエゴが動かす世界だとしても、
非情で残酷な運命が取り巻く世界だとしても、
競馬の輝きを、
彼の放った眩しさを、
わたしの人生を変えたほどの彼の輝きを、
そのすべてを、
私は競馬だと呼んで、愛する。
どんなに苦い結果でも、
それは愛された結果だと肯定する。
わたしは、
トウカイトリックは愛された馬だと信じる。
決して思い出すたび、哀しくなるような馬ではない。
彼は光だ。
-
するめさん
ロジックさん、いつも読みごたえのある深いコメントをありがとうございます。
お言葉を読んでいて、競馬って深いなって思いました。
勿論、明るい方にも暗い方にも、深さがある。
その深さを「広がりだ」と表現したいと思いました。
そうですね、
信じて、願って、愛したいですね、競馬。 -
するめさん
おうまの親子♪さん「いいねのボタン」ありがとうございます。
すっかり秋ですね。
私は花にたとえられるとき、
彼岸花に例えられることが多いんですが…(怒)
しかし、彼岸花の季節ですね。
わたしの第一印象は、今日も彼岸花です。 ←ブキミ(笑)
おうまの親子♪さんは、黄色の花っぽいですね。 -
するめさん
ブンブンさん、こんばんは。
するめって名前は、
昔の後輩がハンドルネームで使っていたのを勝手に拝借したものなんです。
その後輩に最近、会う機会が無いので、
報告も了承も受けていないため、
まさに借りパチ状態でして、
ちょっと不義理を感じています。
他人のものを勝手に使用しているにもかかわらず、
段々そう呼ばれるのが慣れてきているわたしは、
噛みしめられたいタイプの人間なのかもしれませんね。
ブンブンさんの名前は猫の尻尾の、
機嫌の好さそうに振れてる感じを想像します。 -
ロジックさん
競馬を楽しむということだけで、もしかしたら馬にとっては残忍で残酷なのかもしれません。けれども、それでも…仮に馬の未来に何の責任を持てなくても、馬を愛することは出来るのだと思います。
その思いを馬に届ける方法は知りません。しかし思うことはほんの1ミリでも何かの未来に繋がっていくのだと信じています。人間のエゴなのだと言われても否定はできません。
それでもやはり、信じて願って愛さずにはいられないのがまた、馬に魅了された人間なのかもしれませんね。 -
おうまの親子は♪さんがいいね!と言っています。
-
ブンブンさん
こんばんは(^^)/
するめさんの言葉はいつも、心の中にじんわりと染み入ってきます。噛みしめて、噛みしめてジックリ味わう、正にスルメのように味わい深い、珠玉の言葉をありがとうございます(´▽`) -
するめさん
多分、お察しかと思いますが、
この文章は、トウカイトリックの掲示板を読んで、違和感を感じていたので書きました。
ファンは、彼の歩んだ道を称賛するしかありません。
ファンが、彼の血が残すはずだった可能性を夢見て悔やむのも、また彼への称賛です。
しかし、わたしたちはただのファンです。
だから結果を受け取ることしかできない。
亡くなってしまったことは哀しいことだけど、
私は厩舎の人たちも馬主さんも、誘導馬として受け入れて下さった京都競馬場の方々も、
みんな、トリックを大切にして下さったと信じています。
あれほどの馬です。
亡くなり方も突然で、しかも痛そうな怪我で、ショッキングなことでしたが、
私は、彼を決して「かわいそうな馬」だとは思いません。
↓下へ続きます。 -
するめさん
彼は格好良い馬です。
生き様も、戦い方も、亡くなり方さえ、潔く格好良かった。
誇り高いエルコンドルパサーの子供です。
だれが悪いとか、こうすれば良かったとかはありません。
ただ、彼は私たちの前で全力で生きて、全力で去って行ったのです。
素晴らしいことじゃないですか。 -
するめさん
馬のきもちさん、
心のこもったコメントありがとうございます。
トウカイトリックは不幸な馬ではなかった。
幸せな馬です。
名前を見ただけで「今日も一日がんばろう」という気にさせてくれるなんて、
どんな励ましの言葉より、彼のくれた生き様や走る姿が心に響いたかわかります。
わたしたちの思うトウカイトリックが、
厩舎の皆さんや馬主さん、
そしてたくさんのファンのみなさんにとっても大切であったことを、
私たちはいつまでも覚えていたいですね。
また、いつか、トウカイトリックのお話をしましょうね。 -
するめさん
エアウメシュさん、
長生き願望ないと、よく言われていますが、長生きしましょう!
生きられるだけ生きて、
死ぬのが怖くなるまで、嗚呼死んだ方がまし、と思えるまで生きるのです。
みんな、周囲に迷惑がかかるとかいってそうゆうのを嫌がるけれど、
生きることが少しの迷惑にもならない人間なんかいないのです。
私は周囲に迷惑をかけまくる予定です。
嫌がられてやるぜ(笑)
生きることは記憶することだと思うんです。
私たちが記憶した生き様や感動を何十年先に繋いで行けるように、
先へ先へと振り返りながら、生きていきたいですね。
わたしは、エアウメッシュさんとできるだけ長くお話していたいです。
あなたとお話しするのがすきです。