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92件のひとこと日記があります。

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2014/06/23 20:23

我慢に我慢を積み重ねて

子供の頃、「自分の家は貧乏なのだ」と思っていました。
母親はとにかく一言目には「ダメ!」と言い切る人で、
買い物に行っても、
「あれ買って」だの、「これ買って」だの言わせぬ迫力があり、
私たち姉弟は、
子供が欲しがるようなお菓子のコーナーには近づくことも出来ず、
お菓子売り場にまともに入ったのは小学校の高学年になってからという、
結構、浦島太郎な感じの子供でした。

「お菓子は家にあるので、買いません! わかりましたか?」
スーパーに入る前に、まず母親は私と弟の手を握ってそう約束させます。
スーパーに入ると、とにかく母親が私と弟の手を引いて、自由を奪います。
スーパーには色とりどりの美味しそうなものがいっぱいです。
見たこともないような艶々したものもあります。
「あれが美味しそう、これも美味しそう」
心奪われて立ち止まりそうになると、母親が手をぎゅーっと引きます。
「買いません!」
絶対買ってくれません。
お菓子売り場では、
同じくらいの年かっこうの子供が「あれ買って!」と駄々をこねています。
母親の手が、ぴくっと緊張するのがわかりました。
憧れのお菓子売り場…
母親は私のそんな憧れ心を叩き潰すように手を引いて、
お菓子売り場から距離を取ります。
絶対、そこへは近づかせてくれません。

母親は、いつもそうでした。
ちょっと壊れたものでも「まだ使えます!」
女の子っぽいピンクの手提げかばんが欲しかったのに、
弟も使えるように、と青か緑か黄色しか買ってくれませんでした。
「うちは貧乏なんだ…」
「だからお母さんはこんなにケチなんだ…」
そう思っていました。

「欲しい」と言っても、
「我慢しなさい」と言われました。
「痛い」と言っても「これくらい我慢できるでしょ!」です。
「私が悪いんじゃなくて、あの子が悪いの!」と言っても、
「あんたも悪い! 我慢しなさい!」
そう言って、味方になってくれませんでした。

どうしてお母さんは私の味方になってくれないんだろう。
どうしてお母さんはケチなんだろう。
どうして隣の家のおばさんは買ってくれるのに、うちは駄目なんだろう。

「そうか、うちが貧乏だからだ…」

子供の頃、そう思っていました。

大人になって、弟と話したことがあります。
「うちは貧乏だったよね」って。
弟は笑って答えました。
「そうでもなかったよ」って。

そうでもなかったんです、実は(笑)

母親はお菓子を買ってくれなかったわけではなかったんです。
「ひとつだけよ」と約束して、私たちを納得させる努力をしていました。
母親はお菓子を与えてくれなかったわけではなかったのです。
小麦粉を練ったり、ゼラチンを溶かしたりしてお菓子をつくってくれました。
「欲しい」とねだったものを買ってくれなかったわけではないのです。
「今あるものを大切にしなさい」と教えてくれたのです。
青や緑や黄色のものばかり買ったのは、弟と道具を共有することを学ばせてくれたのです。
「あんたも悪い!」と味方になってくれなかったのは、
「他人の気持ちも考えろ」、そして「我慢を覚えろ」と教えてくれていたのです。

私と弟はスーパーで決して騒ぎませんでした。
騒いでも自分の欲求は通らないと、
母親の手が、ぎゅーっと私たちの手を握っていたからです。

我慢、
我慢、
我慢する、

そして我慢出来たら、
母親は笑って、頭を撫でて、
ホットケーキを焼いてくれるのです。

長い間、我慢に我慢を重ねて、走って来た馬がいます。
オルフェーヴルという怪物や、
不治の病といわれていた怪我や、
長い休養、
つらい治療、
信頼していた主戦騎手の引退や、
レース前の突如の乗り替わりや、
爪の怪我、

レース中も、長い距離を一番後ろで「はやる気持ち」を我慢して我慢して、
我慢して走ります。

もういいでしょう、
もう大人になって、
なぜあの時、その我慢が必要だったのか、
今まで積み重ねてきた我慢がなんのためにあったのか、
あなたが、その我慢と忍耐の上に何を得るのか、
知っても、

ウインバリアシオン

宝塚記念、

あなたの積み重ねてきた我慢が、
幾重もの王冠となって、貴方の頭上で輝くことを、

私は祈っています。

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  • するめさん

    ロジックさんのコメントが素晴らしいので、何度も読んでしまいました。
    抗い続けること、戦い続けることで、その僅かな差を削っていくのだと思います。
    少なくとも、競馬はそうです。
    戦うチャンスを与えられ、怪我を回避し、または乗り越え、
    先へ先へと繋げていったその道の果てに、
    ウインバリアシオンの[勝利」があれば、
    本当に嬉しいことだと思います。

    勉強になりました。

    2014/07/04 22:15 ブロック

  • するめさん

    うまりん。さん、
    「うちって貧乏なんだ…と子供の頃思ってた」って言う人は結構多いって最近気がつきました。
    「橋の下で拾って来た子だ!」って私も言われましたよ(笑)
    「そうか、本当の母親を探しに行こう」とも思ったことがあるんですが、
    いかんせん、わたし、父親にそっくりだったりして(笑)

    親に傷つけられることもありましたが、
    その倍、親を傷つけてきたと思います。
    でもそのほとんどを忘れています。
    傷は、癒えるんですね。
    癒えるというより、許せる、というか、忘れられる、のだと思います。
    成長する、ってことによって、
    乗り越えてきたのだと思います。

    ウインバリアシオンの傷が癒えて、
    その我慢が、今度こそ[勝利]に繋がるように、
    祈っています。

    2014/07/04 22:15 ブロック

  • ロジックさん

    課せられた困難や苦難を打ち破る者と跳ね返され続ける者に、どれだけの差があって何が違うのか未だによく解りません。僅かな運なのか決定的に何かが違うのか…ただそこに何かを嘆くのではなく、抗い続けることに、そしてそれをいつか超えてくれることに、大きな力と感動を感じるのでしょうね。

    勝って得るものも有れば失うものも有る。
    負けることで失うものも有るけれど、得るものや次に繋ぐものがある。
    どちらにしても後退ではなくいつか来る未来のための前進…
    いつか自身が、そしてその夢を繋ぐ者が輝けることを期待して、その努力の結晶を忘れずに心待ちにしていたいですね☆

    2014/07/04 20:23 ブロック

  • うまりん。さん

    こんばんは^^

    我が母に似ているようで似てません^^;
    何故かというと決定的に違うところはその場の思いつき多々ありで
    筋が通ってないとこかな・・

    子供心に我が家って貧乏なんだなぁ〜もしかしてほんとに私は
    橋の下で拾われてきたんじゃないか!と少女趣味の
    悲劇のヒロインになって妄想してた頃が懐かしいです。

    するめさんのお母様は貫き通され、姉弟が大人になって気づくまで
    見守られたんですね。おばあさまもそうでしたね♪

    ほんとうにもういいでしょう。今は時代があまりにも違い過ぎます。
    その時代のスターはまた今までの殻を破ってあっと言わせて驚かすのが
    お好きですから、見守りつつ応援しましょう!!

    2014/06/29 00:18 ブロック

  • するめさん

    おうまの親子さん、こんばんは。
    お名前に「親子」とつくような人が「ダメ母」なわけがありません。
    あなたの名前や生き方に「親子」という思想がある。
    自分を「親」だと知っている人は、親としての生き方をしてきた人です。
    私は人の親にはまだなれていませんが、
    何時かなれるならばなってみたいと夢見ています。

    傍らに愛しいものを常に置くような、
    あなたの名前が大好きです。
    「おうまの親子」さん、
    素敵です。

    2014/06/26 20:53 ブロック

  • するめさん

    ハルソルさん、こんばんは。
    ホットケーキは美味しいですよね。
    バターとはちみつと、時々メープルシロップ。
    ほっぺたいっぱいに放り込んで、一生懸命食べたものです。
    ホットケーキのある風景は、とても幸せなものです。
    ハルソルさんのお子様も、きっとそうゆう記憶があるでしょうね。
    是非、焼いてください。

    ウインバリアシオンは強い馬なので、今回は負けないと思います。
    我慢して、我慢した馬が最後は勝つレース、
    それが宝塚記念です。

    2014/06/26 20:53 ブロック

  • するめさん

    のど輪だ田上!さん、こんばんは。
    のど輪だ田上!さんの、
    モヤモヤやムラムラの気持ちが晴れて、良かったです(笑)
    はい、宴会の用意ですね!
    小麦粉を牛乳と卵で溶いてトロトロにして、
    ホットケーキを焼きまくり宴会です。

    ウインバリアシオン、

    痩せ我慢でも、
    我慢しきれる男の人は、
    格好いい大人だと思います。

    WINSでの絶叫、歓喜のものになりますように。

    2014/06/26 20:52 ブロック

  • するめさん

    エアウメッシュさん、こんばんは。
    人生を生きる上で、一番「役にたったこと」は、
    母親に教えてもらった「我慢」だった気がします。

    エアウメッシュさんのお子様は、
    きっとエアウメッシュさんと根くらべをした日々を必ず人生の糧にして、
    辛い時や、哀しい時に、負けないように進んで行くのだと思います。
    息子さんが泣いているのをみて、娘さんが、
    「良いの?」と立ち止まったというエピソードだけでも、
    それはわかります。
    人の気持ちがわかる、優しい女の子ですね。
    息子さんもその時立ち止まったお姉ちゃんの優しさを、
    学んで生きていくのだと思います。

    ウインバリアシオンも、厩舎の方々にぎゅーっとされて、
    G1の大舞台で、価値在る「我慢」ができるように、
    私は祈っています。

    2014/06/26 20:52 ブロック

  • おうまの親子さん

    するめさん、こんばんは☆
    わたしはダメ母だったかも(><)
    日記を拝見して、できることなら子育てをやり直せればと思いました。

    するめさんのお母様は厳しいだけでなく、それ以上に深い愛でするめさんと弟さんを育てられていたのですね。
    私も親になって初めて実感したことが多々ありました・・・・。

    2014/06/25 21:09 ブロック

  • ハルソルさん

    はじめまして。
    私は大きくなった子供が姉弟といますが大切な事教えられたかな!?と少々心配にはなりますがホットケーキはよく焼きましたね(^-^)

    ウインバリアシオンは有馬記念の時に見ました。いっつも頑張ってるけどオルフェ−ブルの2番手・・・私もそろそろウインバリアシオンが主役になってもいいんじゃないか!って思っています。

    ウインバリアシオンが勝ったら私もホットケーキ焼いてお祝いしますよ♪

    2014/06/25 17:20 ブロック

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