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92件のひとこと日記があります。

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2015/03/08 21:09

阪神大賞典という名の転機 ?

その日、青年がわたしにした報告は、私を驚愕させた。
晴天の霹靂だった。
わたしの部署には全く関わり合いのないことが、わたしの部署の責任になっていた。
業務外のことを勝手にして失敗した、というのだ。
わたしは、事実を二人に確認した。
彼らも「これはただ事では済まない」とすぐに悟った。
どの部署も責任をとりたがらず、
一番責任者の経験の浅い、つまり一番弱い立場のわたしを、
わたしの部署を、
人身御供に差し出して解決しようとしていた。
「いつ辞めても良いのよ」というのが口癖だった年上の女性が、「冗談じゃないわ」と
わたしに喰ってかかった。「やめさせられたらどうしてくれるのよ」と。
青年は「あんたが全部責任をとってとばされればいいじゃないか」と言った。
わたしはなにを言い返したらいいのかわからなかった。
押しつけられている責任がわたしの行っていた業務とかけ離れていて、
言いがかりにしか見えなかったからだ。
震えが止まらず、温かいものを飲んでも歯の根が合わなかった。
なんでこんなことになっているのかわからなかった。
他の部署のひとがやってきて、
「あなたの部署はこんなことに手を貸したの?」と問い詰めに来た。
突拍子もないこと過ぎてどこがどこにつながっているのかさえわからなかった。
「現状が確認できていません」と答えても、
「上はあなたに責任を押し付けるつもりよ」と忠告される。
それでもこなさなければならない仕事に追われて、深夜まで残業をする。
倒れそうになりながら、朝出勤する。
監査係が調査会を実施すると宣告に来る。
出席者はわたしひとり。
わたしの部署の二人の部下は、呼び出されなかった。

処分を受けるのはわたしひとり、ということか。

そのことに少し安心してしまう。
職場というのは、そうゆう理不尽が降りかかってくるものなのかもしれない。
まったく、私に身に覚えのない事案。
なにも言わず、受け入れるのが責任者というものなのだろう。
そうなのだろう。

日曜出勤で、疲れきって、休憩しようと休憩室でひとりテレビをつけた。
いつまで出来るか分からない仕事だった。
だから責任感、をもって、終わらせようと自分を日曜の午後、動かしていた。
椅子に座って、テレビを眺めて、その画面で、馬が走っていた。
競馬にそんなに興味はなかった。
けれど、ディープインパクトの名は知っていた。
いつのまにか隣にいた定年前のおじさまが、
「こんなのディープインパクトの独り勝ちだよ」と言った。
目の端にひょいと、いつもわたしをひっかけてくれる、面倒見のいいおじさまだった。
「この馬は強くてさ、どんなに抵抗しても最後は全部追い抜いていっちゃうんだよ。
勝負したら負けちゃうのに、なんで、この馬たちは挑むんだろうな」
「負けるのに?」
「ものが違うんだよ」

「なのに何故…」

レースがスタートした。
一頭の馬が負けるなんて考えてないように飛び出していく。

「あーあ、駄目だ。この馬、逃げ馬だったか? 勝負する気あるのか」

その馬は、ものすごい勢いで先頭を走っていく。
テレビに映っているのを見るだけで、体が他の馬より小さいのがわかる。

「負けるのに走るの? 同じ距離を?」
「それはやらなきゃ、わからないからさ。嘘だろ、こいつ、負ける気無いぞ!」

4コーナーを曲がって、ディープインパクトが全頭をごぼう抜きしていく。
抜かされても追いすがるように、その馬は走っていた。
ゴール前を通り過ぎて、最初のカーブまで追いつき追い抜かすように追走した。
トウカイトリックか…」

おじさまが言った。あの馬は、

トウカイトリック

それが出会いだった。



→→→?に続く

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    エアウメッシュさん、おっと、ここにも!(笑)

    2015/03/12 19:43 ブロック

  • エアウメシュさんがいいね!と言っています。

    2015/03/10 12:54 ブロック