愛馬、哀馬。

今朝も朝陽が馬房に射し込む。雀が鳴き爽やかな風が厩舎前を吹きわたる。

月曜日。何時もと変わらない静かな朝。

しかしその馬房に帰ってくるはずの彼女は帰ってこなかった。

8回、「よく頑張った」…と褒めて。

22回、「次、また頑張ろう」…と励まして。

…でも今度はなんて声をかけていいの？

褒める事も励ます事もできない。


最初で最期の「さよなら」

…そして「ありがとう」


彼女が居た馬房には僅かに彼女の匂いがする。それは彼女が生きていた証。

彼女の匂いを5月の風がさらっていく。しかしﾌﾐﾉｲﾏｰｼﾞﾝとの思い出はいつまでもその場所に留まるであろう。

…今日はいつにも増して朝陽がその馬房に降り注ぐに違いない。