洗脳

毎日毎日、脳に同じことを刷り込まれると、それが暗示となって自分の意思となってしまうものだ。
「あんたみたいなやつ死んでくれたらよっぽど皆の為になるんだけど」
「死んでくれたら家のローンもチャラになるし、あんたが人の役に立てるのは唯一死ぬことじゃない？」
そんなことを毎日毎日言われ続けたら
俺って世の中に必要ない存在なんだな
って思いこんでしまう。
「あ、でも自殺だけはしないでね。世間体もあるし子供たちもショックだし、保険も降りないかもしれないから」
そう言われ続けると、死に方も考えなければならない。
中央道でよく事故が起こる下りの大カーブにアクセル全開で突っ込むのが最有力だったが
エアバックで生き延びてしまうかも知れない。

そこで選んだのが
「福島の原発除染作業に従事する」ことだった。
作業員がいきなり嘔吐して搬送され、その日のうちに死んでしまうとかあるらしい。

これならば殉職である。
誰かがやらなければいけない仕事に従事して命を落とす。
これならば子供たちにも誇れる死に方ではないか！

そうやって福島の派遣会社に履歴書送って、書類選考を通りあとは面接に行くだけだった。
いつ死んでもいいように、俺が死んでも悲しむ奴がいないように、友達付き合いもせず数年を過ごしていた。

嫁と顔合わせたくないから夕方バイトのマッサージ屋で働いてたのだが
そこで「俺、福島へ行くことにしたから再来月くらいから辞める」って言ったら

「いくら金に困ってるからってそんな仕事したくないわ〜」とか言うスタッフもいる中

「井角さん、考え直してください！」って必死で反対してくれたのが後輩だった。
親しい友達を作らず過ごしてきたはずなのに、こんな所に俺の身を案じるような奴がいたとは・・・

そして同じように、このサイトの親しい友達にも打ち明けたところ、ファミレスに呼び出され、２人がかりで説教された。

誰も俺のことなんか心配しないように過ごしてきたはずなのに、まさかネットで知り合った女子達とバイト先の後輩が俺の自殺行為を止めることになろうとは・・・


先週の木曜日
あやみんにいきなり
「井角さんって、私と○○さん（後輩）をくっつけたいんですか？」って言われた。
「うん・・まぁ、そうなったらいいかなぁって思ってる・・・」
複雑な心境だったが
「年齢もちょうど同じくらいだし、お互いフリーだし、ちょうどよくね？」と言った。

でも、富士急ハイランドの時、後輩と一緒に乗り物乗りたがらなかったし、助手席に乗るのもあやみんは拒んだ・・・
だからもう、脈ナシなのかなと思った。

だから、あやみんがダメならクリスマスまでに誰か紹介してあげたいなって思っていた。
後輩は誠実な男だ。
俺の離婚が決まった時も、めっちゃショック受けてた。
別に全然親しくしてたわけでもなく、一緒に飲みに行ったりしたこともなかったのに。

だから、もし、あやみんに彼氏ができるんだったら、後輩だったらいいなって思ってた。

あやみんのことをリサーチし始めたのも、後輩とのキューピットになりたかったからだ。
俺の中で多少のイレギュラーはあったとしても初心は忘れてはいけない。

次の木曜日
今度こそ（俺のいないところで）あやみんが後輩の助手席に乗れるように
井角・・・動きます。